2025年11月20日(木)鑑賞 ローソン・ユナイテッドシネマ岡崎(スクリーン1 I-08)
2025年11月14日(金)公開 / 上映時間:106分 / 製作:2025年(日本) / 配給:日活=KDDI
【監督】 飯塚花笑
【キャスト】
 サチ:中川未悠 / 若村篤彦:前原滉 / メイ:中村中 / アー子:イズミ・セクシー /
 ベティ:真田怜臣 / ユキ:六川裕史 / ツカサ:泰平 / 岡辺隆之:渋川清彦 /
 赤城昌雄:山中崇 / 時田孝太郎:安井順平 / 狩野卓:錦戸亮
【あらすじ】
東京オリンピック後の高度経済成長期にある1965年の東京。国際化に向け、売春の取り締まりが強化されるなか、警察は性別適合手術を受けた「ブルーボーイ」と呼ばれる人々が戸籍上は男性のまま女性として働くため、現行の売春防止法では摘発できないことに頭を悩ませていた。そこで、警察は性別適合手術そのものに目をつけ、「生殖を不能にする手術は『優生保護法』に違反する」として、ブルーボーイたちに手術を行っていた医師・赤城昌雄(山中崇)を逮捕し、裁判にかけた。一方、東京の喫茶店でウェイトレスとして働くサチ(中川未悠)は、恋人の若村篤彦(前原滉)からプロポーズを受け、幸せを感じていた。しかしある日、赤城の弁護を担当することになった弁護士・狩野卓(錦戸亮)が彼女を訪ねてきた。実はサチもまた、赤城のもとで性別適合手術を受けた患者の一人だった。狩野はサチに対し、「性別適合手術を受けた証人として裁判に出廷してほしい」と依頼する・・・
【感想】
この映画はぜひ観たいと公開前から思っていた映画です。最初は自宅から遠い映画館での上映しかないと思っていたのですが、調べたらいつも行っている映画館の近くの別の映画館で上映していることがわかったので、すぐに観てきました。

「ブルーボーイ事件」は、実際に高度成長期の日本で実際に起きた出来事で、それを題材に性別適合手術の違法性を問う裁判に関わった人々の姿を描いた社会派ドラマです。ボーイズラブが普通にドラマとなり、そういうことがかなり理解されてきているとはいえ、今でもまだまだ偏見のあるLGBTQ+です。高度成長期の日本ではゲイやトランスジェンダーなどまったく理解されていなかった(というよりも嫌悪感)といってもよいと思います。自分の性自認と体が一致しない人など少数なので普通は理解できないことなのかもしれませんが、自分が理解できないことは間違ったことだとか、おかしいことだと思う意識を少しでも変えていくことが、少しでも多くの人が幸せに暮らせる社会なのだということだと共有されていけばと思います。

裁判で検事がサチに「男で生まれたからには子孫を残して男として責任を持って生きるのが当たり前だ」と強く詰め寄るシーンは、けっこう衝撃的で、男でも女でもこういうことを強く主張する人は現在でもある割合で存在し、そういう人はきっと心の底から理解はできないのだろうなと絶望な気持ちになるシーンでした。逆にサチの証言は心に響く部分が多く、誰のためでもなく、男とか女という枠ではなく、自分が幸せに生きることができる社会であることの大切さが伝わってきました。最初はまったく理解できずに迷走していた弁護士・狩野でしたが、最後には「犯罪犯さない限り、誰でも幸せを求めて行動する権利は憲法で認められている」と裁判官に訴えた言葉には迫力がありました。自分の中の違和感という形に見えないことを第三者が適切に判断できるかとか、人に不快感を与える度合いとか、単なる性嗜好との違いとか問題は残るので単純ではありませんが、まずは、自分の理解できないことを拒否したり責め立てる社会にはなってほしくないと思いました。結婚も、子孫や家を守るために男女がするものというのではなく、人生を一緒にともに生きていきたい人とするものだと考えればいいのにとずっと思っています。

性自認が心と体で異なるということに関しては、 ちょうど男女が入れ替わる「君の顔では泣けない」を観たあとだったので思ったので、性自認が心と体で異なる人と言うのは、生まれつき男女が入れ替わった形なのだと考えてみるのも考え方を少し変えていく一助になるのかなとも思いました。その人の気持ちになっていろいろ想像することが大事なのかもしれません。

性的だけではなく世の中にはいろんなマイノリティの人がいます。白黒だけではなくグレイの部分も含めればそれは千差万別で、そういう人は生きていくのがつらい世の中なのかもしれません。そんな中で自分にとっての幸せを見つけて生きていくことのできる世の中であればと思います。裁判長の「今、幸せですか」という問いにサチが「幸せです。しかしその幸せは他の人の幸せとは違うと思います」とこたえるのですが、そう言える自分の物差しと強さを持ちたいものだと思いました。

主演の中川未悠は実際に性転換した人で、オーディションで抜擢された素人俳優ですが、証言のシーン、恋人との複雑な心境の会話、大切な友人の死、世間の偏見などの難しい役をとても素晴らしく演じていました。実はこの人はこの映画で知る前にSNSで注目していた人だったので、ここまで演じることができたというのは良い意味で意外でした。この人を見ていると男とは何だ、女とは何だとつい考えてしまいます。また、好きだった歌手の中村中も、自分を隠して世の中の偏見に強く生きていく女性をとても凛々しく演じていました。

ストーリー、キャストともに思っていた以上の良い映画でした。
上記はあくまで私の主観です。あとで自分がその時にどう思ったかを忘れないための記録であり、作品の評価ではありません。
また、ネタバレの記述もありますので、ご注意ください。