2025年11月18日(火)鑑賞 イオンシネマ岡崎(スクリーン1 G-9)
2025年11月14日(金)公開 / 上映時間:123分 / 製作:2025年(日本) / 配給:ハピネットファントム・スタジオ
【監督】 坂下雄一郎
【キャスト】
 坂平陸:芳根京子 / 水村まなみ:橋海人 / 坂平陸(15歳):西川愛莉 /
 水村まなみ(15歳):武市尚士 / 田崎淳一:中沢元紀 / 坂平禄:林裕太 /
 瑞穂:石川瑠華 / 喫茶「異邦人」2代目店主:前野朋哉 / 蓮見涼:前原滉 /
 喫茶「異邦人」店主:ふせえり /
 水村渚:大塚寧々 / 水村治:赤堀雅秋 / 坂平葉月:片岡礼子 / 坂平春樹:山中崇
【あらすじ】
高校1年生の坂平陸(芳根京子)と水村まなみ(橋海人)は、プールに一緒に落ちたことをきっかけに心と体が入れ替わってしまう。2人はいつか元に戻ると信じ、入れ替わったことを周囲に秘密にしたまま日常生活を送りはじめる。陸としてそつなく生きるまなみとは異なり、不器用な陸は入れ替わったことをなかなか受け入れられず、戸惑っているうちに時が流れていく。そのまま高校を卒業し、進学、初恋、就職、結婚、出産、そして親との別れと、人生の転機を入れ替わったまま経験していく2人。そして30歳の夏、まなみは陸に、元に戻る方法がわかったかもしれないと告げる・・・
【感想】
9月に小説を読んで一日で読み切ってしまうほど面白かった君嶋彼方の作品の映画化です。小説を読んで、これを映画化したら絶対に感動すると感じたのですが、調べてみると11月に公開ということでとても楽しみにしていました。

陸とまなみを演じた、芳根京子と橋海人、西川愛莉と武市尚士が、とても良かったです。男女の入れ替わりというと、過剰に男っぽく、女っぽく演じられることも多々ある中で、この映画では実に自然な形で入れ替わった陸とまなみを感じることができました。

原作同様、いつかもとに戻れると信じながら、15歳から30歳までの15年もの間の自分とはことなる環境で人生を過ごさざるを得ない切なさややるせなさを感じます。そんな中で、元に戻った時のためにお互いの人生を大切に生きる優しさと強さも感じます。最初は元に戻りたいと戸惑う陸を、ひょうひょうと男として生きるまなみが支えていく構図なのですが、そのまなみが心の中の思いを吐き出す終盤のシーン(小説ではside M 27にあたる)では、心が痛むほどの苦しさや悲しさを感じて泣けてきます。また、切迫早産の可能性で入院している陸からの電話を受けて、陸の妊娠を知った時のまなみの複雑な思いとその表情にもグッとくるものがありました。

前半は、喫茶店「異邦人」での年代を超えた会話が多くて静かに物語が進むのですが、陸の父親が亡くなったあたりから、ふたりの感情が揺れはじめて、お互いを思いながらも自分の抑えてきた思いを吐き出していくという流れになります。小説の感想でも書きましたが、幸せな結婚をして愛する人の子どもを産むという夢を持っていた女性が、男の体になるということは、想像を絶する絶望感と苦しみだと思います。陸は戸惑いながらも、素晴らしい夫を見つけて幸せな生活を送るのですが、まなみはそれを見るとさらに複雑な気持ちになることは想像できます。なので、映画ではそのまなみの気持ちをより強く表現するために、元に戻る方策を調べて決行することを陸に迫るという展開になっています。陸は今の生活のままで良いと言い、まなみは戻りたいけどそういう陸の気持ちもわからないではない。ラストはそういう二人の葛藤を描いて、小説のラストシーンにうまくつなげていました。それで元に戻ることができたのかどうか、それは観た人それぞれの思いに委ねられています。

小説と同様、30歳のふたりの一日と、15歳からの話が交互に展開されますので、最初は映し出される数字の意味も含めてわかり難いかも知れませんが、そういう構成のために今の一日の感情がだんだんとわかってくる面白さがあります。ただ、小説では、毎年実玖とまなみが会うことにした理由、陸が女性として生きる中でセクハラによる生きることの苦しさ、陸がまなみの友人と距離ができてしまう経緯、陸とまなみと田崎の三人の気の合う関係、陸の弟・禄の兄としてのまなみに対する違和感、陸と優しい夫・涼との出会い、などが詳しく描かれていて話が広がっています。さすがに映画ではそのあたりは端折っていますので、私としては映画と小説の両方を楽しむことがお勧めです。

小説を読んで感動した内容を、しっかりと素晴らしいキャストで期待以上に描いているとても良い映画でした。
上記はあくまで私の主観です。あとで自分がその時にどう思ったかを忘れないための記録であり、作品の評価ではありません。
また、ネタバレの記述もありますので、ご注意ください。