上巻:2026年4月1日(水)開始 2026年4月10日(金)読了 (4日 5時間33分)
下巻:2026年4月11日(土)開始 2026年4月12日(日)読了 (2日 4時間33分)
作品情報
タイトル 時計館の殺人
著者 綾辻行人
シリーズ
初刊出版社 講談社
レーベル 講談社ノベルス
発売日 1991年9月1日
初刊発行日 1991年9月
書籍情報
出版社 講談社
レーベル 講談社文庫 あ-52-23
判型/ページ数 文庫判/372ページ
発売日 2012年6月15日(新装改訂版)
初版発行日 1995年6月15日(旧版)
2012年6月15日(新装改訂版)
版数 新装改訂版第44刷
発行日 2026年9月4日
定価(本体) 740円
購入日 2026年1月29日
書籍情報
出版社 講談社
レーベル 講談社文庫 あ-52-24
判型/ページ数 文庫判/420ページ
発売日 2012年6月15日(新装改訂版)
初版発行日 1995年6月15日(旧版)
2012年6月15日(新装改訂版)
版数 新装改訂版第42刷
発行日 2026年9月4日
定価(本体) 800円
購入日 2026年1月29日
【あらすじ】
<上巻>
鎌倉の外れに建つ謎の館、時計館。角島(つのじま)・十角館の惨劇を知る江南孝明(かわみなみたかあき)は、オカルト雑誌の“取材班”の一員としてこの館を訪れる。館に棲むという少女の亡霊と接触した交霊会の夜、忽然と姿を消す美貌の霊能者。閉ざされた館内ではそして、恐るべき殺人劇の幕が上がる・・・
<下巻>
館に閉じ込められた江南(かわみなみ)たちを襲う、仮面の殺人者の恐怖。館内で惨劇が続く一方、館外では推理作家・鹿谷門実(ししやかどみ)が、時計館主人の遺した「沈黙の女神」の詩の謎を追う。悪夢の三日間の後、生き残るのは誰か? 凄絶な連続殺人の果てに待ち受ける、驚愕と感動の最終章・・・

詳細は下記の通り。
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プロローグ 出版社に就職した江南孝明は三年ぶりに島田潔に会いに行く。島田潔は今は推理作家になり鹿谷門実と名乗っていた。江南は、鎌倉にある中村青司(故人)の建てた時計館の亡霊に挑むという特別企画を実行することを告げる・・・
第1章 針のない時計塔 雑誌「CHAOS」編集部の小早川茂郎、江南孝明、W**大超常現象研究会の瓜生民佐男、樫早紀子、河原崎潤一、新美こずえ、渡辺涼介の7名が時計館に集合する。迎え入れたのは時計館の管理責任者の伊波紗世子。先に来ていた霊能者・光明寺美琴を含めた8人は黒衣に着替え所持品は置いたまま、1989年7月30日午後6時、時計館の旧館へ向かう・・・
第2章 遅れて来た二人 7月30日午後6時頃、特別企画に欠席だった福西涼太が時計館に向かっている。その途中で車のトラブルに遭遇していた鹿谷と出会う。目的地が同じだと知った二人は一緒に時計館に向かう・・・
第3章 <旧館>その1 旧館の中には、館の主人だった古蛾倫典(故人)のコレクションである時計108個が時を刻んでいた。午後9時、光明寺のもとで交霊会が始まる。その交霊会で光明寺は古蛾倫典の娘・永遠(故人)と交信を交わす。その深夜3時半頃、江南は振子の部屋に向かう光明寺を見つける。そして振子の部屋で会話と異音を聞く・・・
第4章 死者の鎖 時計館を訪れた鹿谷と福西は、対応した紗世子に受け入れられず退散する。鹿谷のマンションでふたりで古蛾家の関係者が7人も死んでいるという情報を共有していた7月31日午前3時頃、紗世子から相談事があるから来てほしいという電話があった。紗世子は鹿谷から手渡された著書と名刺から鹿谷に興味を持ったようだった・・・
第5章 <旧館>その2 7月31日の2時頃、江南は目覚めた。他の6人も目覚めが遅かった。光明寺がいないことに気づき、小早川と江南は振子の部屋に向かう。そこには壊れた時計の残骸と絨毯についた赤黒い染みだった。その部屋のクローゼットには、血染めのウェディングドレスがあった。7人は光明寺がいなくなったことについて話し合うが、結論は出ない。江南は中村青司の館であることに恐れを感じる・・・
第6章 遺された言葉 紗世子との約束の7月31日午後9時、鹿谷と福西は再び時計館を訪れた。紗世子の相談事は、古蛾倫典の残した詩の意味を探ることだった。10時半頃、紗世子は由希弥の夕食の準備のため席を外す。その間に、時計館に住んでいる占い師・野之宮泰斉から「納骨堂で死神を見た」ということを聞く。午前0時、紗世子は時計塔の古蛾倫典の書斎に行くことをすすめる・・・
第7章 <旧館>その3 早紀子は部屋で十年前の夏の出来事を思い出していた。そんな時、目の前に蒼白い顔の人物が現れ、ブロンズ製の卓上時計を早紀子の顔面に打ち下ろされた。渡辺は広間で物思いに耽っていた。そして、早紀子の部屋から出てきた仮面の人物に殴られてしまう。それを見つけたのはこずえ、午前1時頃のことだった。仮面の人物がこずえの部屋を訪れて教えたという。江南と河原崎と瓜生と小早川は玄関の扉を破ろうとするが歯が立たない。午前3時半、こずえは仮面の人物から光明寺の香水の匂いがしたことを思い出す・・・
第8章 十六歳の花嫁 午前0時過ぎ、鹿谷と福西は紗世子の案内で時計塔に向かっていた。そこで紗世子から、永遠が16歳の誕生日に許嫁の馬淵智(故人)と結婚する予定だった、しかし永遠は十年前の7月29日に不幸な事故で亡くなったという話を聞く。永遠は森の中の落とし穴に落ちて、顔に傷が残ったために自殺したのだという。そしてそのあとすぐに紗世子も娘を亡くし、夫も亡くしたという。午前2次半、時計館を辞する時、鹿谷は紗世子に、光明寺は永遠の看護婦で永遠が亡くなった後に責任を負わされて自殺した寺井明江の妹・光江ではないかと確認する。帰ろうとしたら鹿谷の車のタイヤがパンクしており、ふたりはさらに時計館に滞在することになる・・・
第9章 <旧館>その4 旧館では、小早川が今回の特別企画の経緯と、光明寺の正体(光江)と小早川との関係、交霊会のトリックについて語る。死んだ永遠のことも、光江から聞いた話として共有される。しかし怯えと恐れは疑心と敵意に変化し、内海は部屋に逃げ込んでいった。午前6時、残った4人は玄関からの犯人の侵入がわかるように扉にガムテープを貼る。瓜生が調べたいことがあると振子の部屋に行くと言うので、江南と河原崎も同行する。そこでウェディングドレスから「おなえたちがころした」という紙片を見つける。部屋にバリケードを設置し閉じこもっていた内海は、カメラをいじっていて妙なことに気づく。その時、壁の大時計が動き、そこから霊衣の人物が現れ、内海の頭めがけて時計を振りおろした。その時刻は午後12時28分・・・

第10章 沈黙の女神 8月1日午前11時頃、鹿谷と福西は起床する。パンクしたタイヤは使用人の田代にまかせ、午後1時前、鹿谷と福西と紗世子は裏庭の納骨堂を訪れた。納骨堂の中には、古蛾倫典、妻・時代、娘・永遠の三つの棺があった。内部を調べていた鹿谷は、奥の壁際の床に小さな穴があるのを見つける。タイヤが直り、鹿谷と福西は午後3時前、永遠の許嫁・馬淵智の父・長平のいる老人ホームに着き、そこで長平から古蛾倫典の異常性を知る。また、帰りに立ち寄った喫茶店で、時計塔の時計が「気まぐれ時計」と呼ばれていたことを知る・・・
第11章 <旧館>その5 広間にいた江南と瓜生は「助けてくれ」という声を聞く。内海の部屋に向かったふたりは、内海の部屋に人気を感じるもバリケードで部屋に入れない。一方、部屋でドアを背もたれにして眠っていた河原崎は、突然激しい衝撃を受けた。抵抗した河原崎は仮面の下の顔を見るが、時計の針を首に刺され力尽きる。その時刻は1時10分。1時半、バリケードで閉ざされた扉を破り江南と瓜生が内海の部屋に入った時には人気は無く、額の割れた内海が倒れていた。河原崎を呼びに行ったふたりは、無残な河原崎の姿を見つける。瓜生は河原崎に「君は関係なかったんだ」と呟く。瓜生は10年前に福西とふたりで落とし穴を掘ったことを告白する。そこで福西涼太が当時は渡辺涼太だったことも話す。そうすると内海はなぜ殺されたのか・・・
第12章 四人の子供たち 紗世子に夕食を誘われていたため、午後7時10分、鹿谷と福西は時計館に戻った。ふたりは夕食の席で初めて由希弥と顔を合わす。鹿谷は、永遠が生きていると思い込んでいると思い込んでいると聞いていた由希弥に正常さと賢明さを感じる。台風の大雨で途中の道が崩れ、ふたりはその日も時計館に泊まることになる。午後11時過ぎ、また時計塔に向かう。そこで鹿谷は時計塔の壁が特殊な造りになっていることに気づく。また、塔の上部の大きな3つ鐘は過去一度も鳴ったことがないという。倫典の書斎で、鹿谷は4人の子供たちの名前の書かれた日記の切れ端を見つける・・・
第13章 <旧館>その6 瓜生は、「内海を殺した犯人の目的は、カメラで撮影した何かだ」そう考えながら犯人の逃げ道についても考えていた。午後11時、江南と瓜生は隠し扉を見つける。そんな時、トイレに行ったこずえは小早川を犯人と思い込み、振子の部屋に逃げ込み、そこで納骨堂に通じる通路を見つける。納骨堂に着いたこずえは外に出ようとして、思いがけない光景に驚く。そんなこずえは後ろから襲われる。隠し扉をすべて確認した江南と瓜生は、眠気が酷いことから睡眠薬を飲まされていたことに気づく。そんな時、広間では小早川が時計を壊していた。こずえのことを確認すると、小早川は自分を見て振子の部屋に行ったと言う。江南は小早川の傷の処置のために残り、瓜生だけが振子の部屋に向った。こずえの姿を見つけられない瓜生に容赦ない一撃が前頭部を打ち砕いた。午前1時のことだった。遅れて振子の部屋に来た江南は瓜生の死体を見つけるが、首の後ろに突然強い衝撃を受け倒れ伏した。午前2時、小早川は天井の窓から逃げようと考えるが、床に落下してしまう。その時、テーブルの下にあるものを見つけるが、殺人者が現れて鉄の棒が振り下ろされる。午前2時40分のことであった・・・
第14章 不眠の功罪 寝付くことができない福西は、10年前のことをカレンダーにして整理することを思いつく。そこで福西はあるおかしなことに気づく。8月2日午後1時過ぎ、紗世子によって鹿谷は目を覚ます。しかし福西は食事に現れない。職を終えた時、使用人の田代が「変なことがある」と伝えに来た。玄関の床が旧館の方から血のようなもので汚れているという。鹿谷は紗世子を促し、旧館の扉を開ける。時刻は2時半、特別企画が始まって68時間と30分が経過していた・・・
第15章 悪夢の果て 意識を無くしていた江南は暗闇の中で意識を戻した。そんな中聞こえた「江南君」という声。鹿谷だった。ただ、死体は早紀子と渡辺のふたつだけで、他の死体はどこにもなかった。振子の部屋のクローゼットにある納骨堂への通路を見つけ、3人は納骨堂へ向かう。そこで石棺の中にこずえと光明寺と野之宮の死体を見つける。塔の外から田所の声が聞こえ、そこには福西が倒れていた。時計塔のどこかの窓から転落したらしい。その時由希弥を呼ぶ紗世子の声が時計塔から聞こえた。鹿谷と江南が追いかけたが、由希弥は時計の機械室から落ちて床に叩きつけられた・・・
第16章 女神の歌声 事件は、由希弥の犯行と言うことで処理されようとしていた。不明だった小早川、瓜生、河原崎、内海の死体は森に中に埋められていたのが発見された。鹿谷と江南は鹿谷のマンションで事件の整理をしていた。アリバイ的に由希弥の犯行でしかあり得ないのだが、ふたりはなんとなく腑に落ちない。しかし、福西が意識を取り戻し、その話からある真実を導き出す。そして8月5日、ふたりは時計館の時計塔のホールで紗世子と対峙し、鹿谷と江南の導き出した真実を伝える。時刻が正午を過ぎた頃、時計塔に異変が起きる。「・・・時は果て、聖堂に七色の光射し・・・地を揺るがす叫びの中に お前たちは聴くだろう 沈黙の女神の ただ一度の歌声 美しき断末魔の調べを」の詩の通り、時計塔は紗世子とともに崩れ落ち終焉を迎えた・・・
エピローグ 鹿谷のマンション。ふたりで事件を振り返る。鹿谷は「警察に真実を話すかどうかは、君と福西君の気持ち次第」。江南は吹っ切れたように「福西君が元気になったら、三人で江ノ島でも行きましょう」と言う・・・
【感想】
huluでドラマ「館」シリーズ第2弾として「時計館の殺人」がドラマ化されましたので、先に小説を読んでおきたいと思って読みました。「時計館の殺人」は綾辻行人の館シリーズ第5弾となりますが、私が読むのは「十角館の殺人」に続き2作目となります。

久しぶりの綾辻行人の作品でしたが、上下巻合わせて600ページの大作にもかかわらず、「十角館の殺人」同様どんどん読み進めることができました。ミステリーとしての大きな流れがあるので、ストーリーや情景が頭に入りやすく、途中で読む中断時間が入っても迷子になったり何だったかと読み返すこともありませんでした。

物語は、時計館の幽霊の調査するために時計館の旧館の中で3日間過ごす出版社と大学の超常現象研究会一行が過ごす旧館内の出来事と、作家・鹿谷門実と欠席した大学超常現象研究会の福西の二人が時計館を訪れる旧館外の出来事が交互に進みます。その構成は「十角館の殺人」と同じで、旧館内と旧館外の関係がトリックの肝となります。そのつど時刻を確認したり書かれたりということで、うすうすその時間にずれがあるのではないかと感づくのですが、それでも犯人だと思わせた人物がそうではなかったという二度の展開で、裏の裏をかかれた感じがする見事な結末でした。

旧館で起きる殺人の動機も、最初から語られていた「落とし穴によって命を落とすことになった古蛾倫典の娘・永遠(とわ)の復讐」かと思わせておいて実は違っていたということに加えて、それとは関係の無い人も殺されるという、一筋縄では考えられない展開となっていきます。つまり、もともとの殺人目的だけでなく、状況によってあらたな殺人目的が発生していくという動きのある展開となっています。殺す人を間違うという人間的なミスも絡みます。十年前の出来事からの繋がりはありがちな内容ですが、落とし穴を作った人間や落ちた人間に変化をつけたりしているので、興味が持続します。ただ、古蛾家にかかわる人物が過去にたくさん亡くなっていたのは、特に関連はなかったようです。

途中、時刻の確認や十年前の出来事や眠気やいろんな伏線が随所に散りばめられています。変に深夜の動きが多いのが特徴でそれも気になりました。二度目に読めば犯人にたどり着ける伏線だろうと思うのですが、最初は、これは伏線だなと思ってもその推測は犯人にはたどり着きませんでした。それほど、作者が見破られないと自信のある伏線ということだろうと思います。そして最後にはその数多くの伏線が見事に回収されて、矛盾や疑問がすべて明確に明かされていきます。何の意味を持っているのかよくわからなかった古蛾倫典の残した詩の内容も、ラストシーンを迎えると見事にその詩の情景が目の前に現れます。

周木律の「堂」シリーズと綾辻行人の「館」シリーズは、両方とも建物をトリックに扱うミステリーですが、「館」シリーズの建物トリックは無理を感じるところもなく、これはありうるかもと思わせてくれる自然なものでした。ラストの大掛かりな結末も、壮大なトリックであるにもかかわらずリアル感を感じさせてくれます。

この大きな時計館のある場所は、鎌倉の今泉(円覚寺の北東方面?)という場所という設定です。広大な森の中の館なのですが、その場所はそういう雰囲気のある場所なのでしょうか。小説の世界だけの場所だとはわかっていますが、一度訪れてみたいと思いました。

これでhuluのドラマ「時計館の殺人」を観ることができますが、小説を先に読んだことが良かったのかどうかはドラマを観てみないと何とも言えません。文字だから読者にわからせないでおけるところ、例えばこずえが納骨堂で見たものとか、そういうのをどう映像で表すのかというところは読後だからの楽しみです。

綾辻行人のミステリーにはまってしまいそうで、「館」シリーズも読破したくなりました。とても面白いミステリーでした。
上記はあくまで私の主観です。あとで自分がその時にどう思ったかを忘れないための記録であり、作品の評価ではありません。
また、ネタバレの記述もありますので、ご注意ください。