2026年2月23日(月)開始 2026年3月28日(土)読了 (9日 5時間43分)
作品情報
タイトル ほどなく、お別れです 遠くの空へ
著者 長月天音
シリーズ
初刊出版社 小学館
レーベル
発売日 2026年1月7日
初刊発行日 2026年1月12日
書籍情報
出版社 小学館
レーベル 小学館文庫 な-38-5
判型/ページ数 文庫判/368ページ
発売日 2026年1月7日
初版発行日 2026年1月12日
版数 初版第1刷
発行日 2026年1月12日
定価(本体) 770円
購入日 2026年1月29日
【あらすじ】
新型コロナウィルスの影響で様々な対応に追われる、スカイツリー近くの小さな葬儀場「坂東会館」。入社4年目となった清水美空も、教育係の漆原と同じ「葬祭ディレクター」を名乗るための試験を受けられず、煮え切らない気持ちでいた。そんな中、漆原の師である社員・水神が引退を決め、美空はある大役を任されることになるが・・・。

不可解な場所で交通事故に遭った料理人、新婚の夫の遺体との面会を拒む妻、かつて息子と孫を同時に亡くし改宗した男性、美空の高校時代の恩師・・・コロナ禍でも人々の営みは続き、まさに今、お別れに直面する人がいる。漆原の過去も明らかになる、人気シリーズ第四弾!・・・

詳細は下記の通り。
クリックして詳細を表示(ネタバレ注意!)
プロローグ 2021年末、2020年1月に新型コロナ感染者が確認されてから2年近く経つが、まだスカイツリーは往時の賑わいを取り戻せていない。スカイツリーから東京の街を見下ろしながら美空は「漆原は今日もどこかで仕事をしているのだろうか」と思う・・・
第一話 コロナ禍の再会 コロナ禍で葬儀は行動制限で縮小化化され、坂東会館もアルバイトやパートの人件費削減が進んでいた。漆原もコロナ禍で外部の仕事ばかり引き受けており、美空は数ヶ月漆原と会っていなかった。そんな時、ベテランの水神から漆原が戻ってくると聞かされる。そんな時、坂東会館の近くで交通事故があり、美空がその被害者である村井和宏(49歳)の葬儀の担当となる。しかし、遺族である妻と娘は、なぜその場所にいたのか疑問を持っていた。坂東会館に戻ってきた漆原とその理由を遺族のために明らかにしようとしている時、水神から引退の話を聞く・・・
第二話 嵐のあとに 水神の顧客を引き継ぐことになった美空は、その中の安藤家から後任を拒否されたことを気にかけていた。そんな時、ショッピングセンターのエスカレータで転倒して亡くなった辻陽人(32歳)のご遺体が運ばれてきた。やってきた妻・由香は故人に会おうともせず、漆原と美空に自分が喪主でいいのかと問う。通夜の日、由香は美空と話す中で、コロナ禍で家の中でふたりで過ごすことが多くなり夫とはケンカが絶えず離婚をするところだったことを話す。由香はそうなってしまったことを自分のせいと責め、陽人の両親に申し訳なく思っていた。そんな由香に漆原は、自分を責め申し訳ないと思うのは故人との幸せな時があったからではないのですかと諭す・・・
第三話 春のおとずれ 2022年の春を迎える時期、水神が体調を崩したとの連絡が入る。美空は葬祭ディレクターの試験に向かって特訓を繰り返していた。そんな時、水神の顧客である東郷家の東郷澄江(84歳)の葬儀が入り、美空が担当となる。喪主は夫・東郷武一で、この夫婦はかつて事故で亡くした息子と孫の葬儀を水神と若い頃の漆原が担当していた。その昔の葬儀で、水神は自分も息子を亡くしたことでそばに寄り添っていたことを知る。そのことで美空はあらためて、心からご遺族の支えになることの大切さを知り、その大切なものが水神、漆原、そして美空に受け継がれていることを感じる。そして美空は、葬祭ディレクターの試験に挑む・・・
第四話 遠くの空へ 5月に入り、試験の結果を待ちながら美空は引退の迫る水神の引継ぎと、水神に頼まれた生前葬の準備に追われていた。そんな時、58歳女性の孤独死の案件が入る。その女性の名前を聞いた美空は、その女性が高校の美術部の顧問だった宮前亜沙子だと知って愕然とする。遺族である姪の祥子から、漆原だった担当を美空に代わってほしいと頼まれる。その理由は、父親や祖父の暴力などで家族が男性不信になっているからだという。笙子は美空が叔母の教え子だと知り、みんなで叔母らしい葬儀で見送ることを希望する・・・
美空は、水神が「漆原は孤独死が苦手」だと言ったことが気になり、水神の口から漆原が幼い頃に離婚し孤独死した父親の葬儀を水神とともに行ったことを聞く・・・
エピローグ 6月最後の友引の日、坂東会館では盛大に水神の生前葬が行われた。参加者は坂東会館のスタッフと関連業者、水神と親交のある顧客。生前葬のスピーチで、美空の葬祭ディレクター試験合格を告げる。参加してたかつて美空の担当を拒否した安藤さんから、拒否したのは試験に発奮させるための嘘で水神から頼まれたことだったことを明かす。生前葬が終わったあと、「合格祝いはどうする?」と尋ねた漆原に、美空は考えていたことを漆原に伝える・・・
【感想】
2月6日公開の映画「ほどなく、お別れです」のシリーズ小説、第4弾です。

今回の作品は文庫本書下ろしで、たぶん映画公開に合わせて企画されたものだと思います。いつもどおりプロローグとエピローグと4つの話の構成ですが、全体を通しての話は、坂東会館のベテラン・水神の引退と水神の持つご遺族の支えとなることの大切さの継承ということです。その中で、美空がさらに成長して、女性葬祭ディレクターの誕生というところで完結します。

また、コロナ禍の影響を引きずる2021年12月から2022年6月の物語となっていて、葬儀の形式が変化する中で、第1話はコロナ禍で経営の苦しくなった料亭にかかわる話、第2話はコロナ禍で生活が変わってしまったことによる夫婦の悲しい話と、コロナ禍にかかわる内容となっています。

今回も、病院やクリニックでの待ち時間に読むことが多かったのですが、目がうるんできたり鼻水が流れてきたり、マスクで隠してはいても人前で読むのは困る作品でした。しかし、それぞれのエピソードが悲しくて切ないということよりも、葬儀を担当する側の優しさや思いやりが強く心に響いてきての涙でした。そこまで立ち入って遺族の気持ちに寄り添ってもらえることは現実社会では期待できないとは思うものの、人間の優しさや大切な人が突然いなくなって二度と会えないという悲しみの中での寄り添いというものには期待してしまう気持ちもあります。

人間はいつ何時突然命を落とすかわかりません。こういう葬儀社の小説を読むと特にそういう思いを強くします。その時に、残された人間が困らないように、苦しまないように、戸惑わないように、常日頃から話をしてコミュニケーションを密にしておくことが必要だと強く感じます。でも、今の状態がしばらく続くとそういうことは忘れて、今の状態が普通でいつまでも続くと思ってしまうのも人間だと思うので、意識をして「普通ではないのだ」と忘れないようにしたいと思います。

これで4作全部読破しましたが、本当にうまく構成されているし、心に迫ってくる話だなと思いました。このシリーズ以外の長月天音の作品も読んでみようかなという気持ちにもなりました。
上記はあくまで私の主観です。あとで自分がその時にどう思ったかを忘れないための記録であり、作品の評価ではありません。
また、ネタバレの記述もありますので、ご注意ください。