2025年12月4日(木)開始 2025年12月8日(月)読了
作品情報
タイトル 汝、星のごとく
著者 凪良ゆう
シリーズ
初刊出版社 講談社
レーベル
発売日 2022年8月4日
初刊発行日 2022年8月4日
書籍情報
出版社 講談社
レーベル 講談社文庫 な-101-1
判型/ページ数 文庫判/456ページ
発売日 2025年7月15日
初版発行日 2025年7月15日
版数 第1刷
発行日 2025年7月15日
定価(本体) 900円
購入日 2025年9月6日
【あらすじ】
風光明媚な瀬戸内の島で育った暁海(あきみ)と母の恋愛に振り回され転校してきた櫂(かい)。ともに心に孤独と欠落を抱えた二人が恋に落ちるのに時間はかからなかった。ときにすれ違い、ぶつかり、成長していく。生きることの自由さと不自由さを描き続けた著者がおくる、あまりに切ない愛の物語・・・

詳細は下記の通り。
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プロローグ 「月に一度、わたしの夫は恋人に会いに行く。」から始まる、暁海の夏のある日の夕暮れ時・・・
第一章 潮騒 【青埜櫂 17歳 春】
母が男を追って京都の高校から転校してきた櫂は、そんな母親から自立するために漫画家を目指していた・・・
【井上暁海 17歳 春】
暁海の父は恋人・瞳子のところから戻らない。母は暁海に父の様子を見てくるように頼むが、暁海はひとりでは気が進まず、櫂を連れて瞳子のところに向かう・・・
【青埜櫂 17歳 夏】
櫂は、漫画家になるために卒業後は東京に行くことを考えていた。噂ばかりの島から出たい暁海は、東京の大学に行き瞳子の影響で刺繍もやりたいと思っているが、父に捨てられた母のこともあり進路に迷っている・・・
【井上暁海17歳夏】
暁海と櫂の距離は似ている環境もあり、心は近づいていった。それが狭い島では噂となる。東京に行きたい暁海は学費の相談のために櫂とともに父と瞳子の元を訪れる・・・
【青埜櫂 17歳 夏】
夏休みの終わりの花火大会の日、櫂と暁海は浜辺で結ばれた。そこを化学の北原先生に見つかり学校に呼び出しを受ける。しかし北原先生の話は予想外の内容だった。そんな時、櫂と相方・尚人の漫画の連載が決まった。暁海から「母がいなくなった」との連絡を受け、捜すと暁海の母は瞳子の家に放火しようとしていた。暁海はそんな母をひとりにはできないと東京に行くことを断念する・・・
第二章 波蝕 【井上 暁海19歳 夏】
暁海は卒業後、内装資材会社に勤めていた。盆休みには東京に行った櫂の元へ通う。しかし、好きな刺繍の道と、男女格差のある職場での仕事に対する迷いを感じていた・・・
【青埜櫂 22歳 夏】
櫂は漫画家として忙しくなり経済的にも余裕が出てきて、他の女とも関係ができていた。その年のお盆は櫂が暁海に会いに島に戻ったが、櫂は暁海との会話に退屈さを感じ始めていた。そんな思いを振り切るように櫂は暁海に「結婚・・・する?」と言うが・・・
【井上暁海 25歳 夏】
暁海は趣味だった刺繍で仕事をもらえるようになっていた。櫂とは生活や金銭感覚でズレを感じることが多くなり、他の女の気配も感じていた。そんな時、「お盆は会えない」と言っていた櫂が急に暁海に会いに戻ってきた。呼び出された暁海はついに櫂の態度に対して「いいかげんにして!」と怒りの感情を出して「別れようか」と櫂に言った・・・
【青埜櫂 25歳 秋】
櫂は暁海の深い心情を読み取れず、一時的な感情で別れを切り出したと思っていたが、自分勝手な自分の行動も反省していた。暁海に謝罪のメッセージを送るが返事はまったく戻ってこない。そんな時、相方の尚人に大きなトラブルが襲い、櫂たちの仕事はすべて崩れ去っていく・・・
第三章 海淵 【井上暁海 26歳 冬】
櫂と別れたら楽になると思っていた暁海は、苦しさが形を変えただけで苦しみは続いていた。母は精神を病み、よくない宗教にのめり込んで財産を使い果たしてしまった。それを非難した暁海から逃れるために車に乗って事故を起こす。その賠償のために暁海は櫂から300万円を借りるために櫂に会いに行く・・・
【青埜櫂 28歳 夏】
櫂は仕事も無く、酒におぼれる日々を送っていた。小説を書くことを勧められるが尚人とやり直すことにしかやる気が起きない。暁海のことは忘れられず、毎月返済金が振り込まれる日を暁海とのつながりだとすがる日々だった。暁海の返事が欲しくて返済額を増やすように送ったメッセージに強い後悔と情けない自分にうなだれる・・・
【井上暁海 28歳 夏】
暁海は櫂の返済額を増やしてほしいというメッセージに対して、自分がそんなことを言わせてしまったと自分を責めていた。そんな時に近づいてきた男と関係を持ってしまい、それが島ですぐに広まってしまった。そんな時に心配した北原先生と話をする中で、北原先生は、ある女性への激しい愛情を暁海に話す。そして、「お互いを助け合うために、結婚しませんか」と暁海に提案する・・・
【青埜櫂 30歳 冬】
櫂は、文芸雑誌へのエッセイで生活をつないでいた。蓄えていた財産は、母親のためにほとんど無くなり、マンションも売り払い、バイト先で知り合った女のところに転がり込んでいた。そんな時、母親から暁海と北原先生が結婚することを聞く。女のアパートを出た櫂はネットカフェで血を吐いて倒れる・・・
【井上暁海 30歳 夏】
母はシェハウスで独り立ちを始めていた。「ひとりで生きることが怖い」と感じていた暁海と北原先生は結婚することを決意する。しかし、暁海は今でも櫂が好きで、北原先生も思う人がいた・・・
【青埜櫂 31歳 夏】
吐血したあとに受けた精密検査で、櫂は胃がんと診断されて切除手術をしていた。そんな櫂を経済的に助けたのはかつての相方・尚人だった。住むところも尚人と一緒に住むことになり、そこでふたりで再起を誓って祝杯をあげた後、尚人は浴室で自分の命を絶った。そして櫂はまた血を吐き倒れた・・・
【井上暁海 32歳 春】
北原先生との結婚生活はうまくいっていた。刺繍の仕事も会社をやめて専念することで順調だった。北原先生は暁海に「人は群れで暮らす動物です。何かに属さないと生きていけない。ぼくが言いたいのは、自分がなにに属するかを決める自由です。自分を縛る鎖は自分で選ぶ」ということを伝える。ある日、櫂の母から櫂が重い病気だと聞いてショックを受ける。北原先生はそれで動揺する暁海を見て、櫂のところに行くことを自然な形で後押しをする・・・
第四章 夕凪 【青埜櫂 32歳 春】
櫂の前にあらわれた暁海は、「待たせてごめんね」「一緒に暮らすの」となんの迷いもなく伝える・・・
【井上暁海 32歳 夏】
ふたりは、高円寺に借りたアパートで暮らし始める。北原先生か新鮮な魚、母からは自分で育てた野菜が届く。島では、結婚後すぐに出奔した暁海は悪女として名が轟いていたが、暁海と北原先生の関係は何も変わっていなかった。「今治の花火、観たいなぁ」という櫂の言葉に、暁海は北原先生と協力してそれを実現する。暁海と櫂、北原先生と思いの人・奈々、北原先生と奈々の娘・結とその恋人という不思議な6人で花火を観ている中で櫂は息を引き取る・・・
エピローグ 「月に一度、北原先生は奈々さんに会いに行く。」から始まる、暁海の夏のある日の夕暮れ時。暁海は、見慣れた砂浜に腰を下ろして東京から届いた、櫂の書いた小説「汝、星のごとく」という本のページを開くのだった・・・
【感想】
本屋大賞の作品ということで、私と長女がともに読みたいと思って買った作品です。

プロローグで、「月に一度、わたしの夫は恋人に会いに行く。」という始まりから、この物語の中の登場人物の関係性や秘密めいたものを感じて引き込まれてしまいました。この言葉で、暁海は腹を立てているわけでもなく、嫉妬している感じでもなく、夫に対する冷たさや無関心みたいなものを感じてしまいます。娘の結が父親の不倫外出を友人と電話で明るく話しているのを聞いた時の暁海の感情もわかりません。

しかし、すべて読んで、エピローグの「月に一度、北原先生は奈々さんに会いに行く。」から始まる同じ情景の描写では、まったく違う暁海の感情が浮き出てきます。結と友人の会話にも暁海は結たちと同じように笑っているようです。プロローグでは、恋人に会いにいく夫を冷たく見て感情を無くしている可哀想な暁海に感じられますが、エピローグの暁海は、強く凛々しくて夫を笑顔でほほえましく送り出している姿が見えてきます。

プロローグとエピローグで、同じような描写を繰り返していながら、その印象がまったく異なるという、そういう構成のうまさや面白さに驚きました。

プロローグとエピローグで暁海の印象を変えてしまうだけの切なく苦しい恋愛が、第一章から第四章まで、櫂と暁海の立場で交互に時系列的に描かれます。こういう物語では、なぜ相手に対してそう思ってしまうのかという第三者から見たすれ違いのもどかしさを感じてしまうことが多いのですが、この作品では、それぞれの立場から見て「そう思ってしまうのは仕方がないなぁ」と感じさせてくれる状況と説得力を感じます。だからこそ、切ない恋愛だったと思いますし、どこかで違う風が少しでも吹いていたらふたりにはもっと違った形があったのかも知れないと思ってしまいます。

登場人物の中で、魅力的だったのは、瞳子と北原先生でした。このふたりは正しいことだけをしている人間ではありません。むしろ人を傷付けていますし、世間的には良くないことをした人間とみなされると思います。しかし、このふたりの言葉には、自分勝手と切り捨てる以上の優しさや、信頼感や、責任を追う覚悟や、生きることに対する強さなど、大切なことを教えてくれる重みがありました。尚人のゴシップ記事もそうですが、表面上の行動や噂程度の情報で人は人を非難したり攻撃したりすることが多く、それが世間というものだと思います。だからこそ、そんなことに振り回されずに、自分の行動や考えを理解して信じていてくれる人さえいればそれでいいと思う強さと信念が必要なんだと思わせてくれます。

その他にも、夢を追う気持ちや、親に対する思いや、経済的な驕り等に対する示唆が含まれています。正論で物事は進まないが、悩むことが多いからこそ最後の拠り所が正論になるのだという言葉も印象に残っています。一度読み終えたあとに、もう一度会話をかみしめて読むのもいいかなと思わせてくれるくらい奥が深い作品だったと思います。

この作品も映画化されたら感動的かもと思っていたら、櫂が横浜流星、暁海が広瀬すずで来年公開されるらしいです。小説で感じた「櫂と暁海」と「横浜流星と広瀬すず」の印象とはちょっと異なりますが、横浜流星も広瀬すずも演技達者なので、いい映画になりそうです。瞳子と北原先生を誰が演じるのかも興味津々です。楽しみに待ちたいと思います。
上記はあくまで私の主観です。あとで自分がその時にどう思ったかを忘れないための記録であり、作品の評価ではありません。
また、ネタバレの記述もありますので、ご注意ください。