2026年5月2日(土)開始 2026年5月2日(土)読了 (1日 5時間48分)
作品情報
タイトル 水車館の殺人
著者 綾辻行人
シリーズ 「館」シリーズ
初刊出版社 講談社
レーベル 講談社ノベルス
発売日 1988年2月1日
初刊発行日 1988年2月
書籍情報
出版社 講談社
レーベル 講談社文庫 あ-52-19
判型/ページ数 文庫判/464ページ
発売日 2008年4月15日(新装改訂版)
初版発行日 1992年3月15日(旧版)
2008年4月15日(新装改訂版)
版数 新装改訂版第66刷
発行日 2026年2月13日
定価(本体) 860円
購入日 2026年
【あらすじ】
惨劇に彩られた「十角館」と同様、奇矯な建築家・中村青司の手になる異形の館、「水車館」。古城を彷彿させる館には、過去の無惨な事故ゆえ常に仮面をつけた当主・藤沼紀一とその妻でありながら幽囚同然の孤独な美少女・由里絵が住んでいる。水車館では、1年前の嵐の夜に奇怪な殺人と、1人の男の密室からの消失が起きている。その不可解な惨劇が、今年も繰り返されるのか? 密室から消失した男の謎、そして幻想画家・藤沼一成の遺作「幻影群像」を巡る恐るべき秘密とは・・・

詳細は下記の通り。
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プロローグ (1985年9月29日 5:50) あるの建物で一人の女が墜落死し、一枚の絵が消えた。その地下室には男が5人、女が1人、そしてそこの焼却炉にはバラバラに解体されて焼かれた男・正木の死体が・・・
第1章 現在(1986年9月28日) 午前8時半、水車館の主である私はいつものように目覚める。父であり偉大な画家・藤沼一成の命日であるこの日は、年に一度だけ客人が訪れる日だ・・・
第2章 過去(1985年9月28日) 午前8時半、水車館の主である藤沼紀一はいつものように目覚める。父の命日であるこの日は、年に一度だけ客人が訪れる日だ。客人は、大石源造、森滋彦、三田村則之、古川恒仁の4人。まもなく20歳を迎える妻の由里絵は、父の弟子・柴垣浩一郎の娘で、両親亡き後、この館で9歳から暮らしている。4月から館に居候している紀一の友人・正木慎吾のことを気に入っている・・・
第3章 現在(1986年9月28日) 午前11時、紀一と正木の人生が変わったのは1873年12月24日夜に起きたあの事故のせい。水車の前でそんなことを思い出していた私の前に、招かざる客・島田潔が現れる。島田は、1年前に正木を殺し逃亡した古川の友人だという・・・
第4章 過去(1985年9月28日) 午後1時50分、前後雲行きの怪しくなった水車館に、客人が訪れる。まず訪れたのは、3人。大石は美術商、森は美術史の大学教授、三田村は外科医師。3人は別館の部屋に案内される・・・
第5章 現在(1986年9月28日) 午後2時、この日訪れた客人は3人、大石と森と三田村。一年前と同じように別館の部屋に案内される。島田は一年前、正木が使っていた部屋を割り当てられる。その部屋は古川が使っていた部屋の隣だった。空模様も一年前と同じように荒れてきた。私は、家政婦の野沢朋子から島田が拾ったという「この家を出ていけ」という不穏な紙切れを受け取る・・・
第6章 過去(1985年9月28日) 午後3時前、激しい雨が降り出した中、遅れてやってきたのは古川。古川は藤沼家の菩提寺の副住職。古川を迎えに出た紀一、由里絵の3人は人の叫び声を聞く。その声は落ちていく女の顔を窓越しに見た執事の倉本のものだった。その女は家政婦の根岸文江、塔のバルコニーから落ちて水車に巻き込まれながら、水路を流れて行った・・・
第7章 現在(1986年9月28日) 午後3時45分、島田は、三田村たちから、1年前の転落事故の状況を聞いていた。島田は塔のエレベータが紀一が玄関にいたにもかかわらず「2」を示していたことにひっかかる。そして、文江が落ちたのは事故ではなく殺人の可能性がもあるという推理を話す・・・
第8章 過去(1985年9月28日) 午後5時半、文江の墜落騒ぎの中、風雨は衰えず山道が通行不能となり警察も来ず、館に閉じ込められた状態となった。正木は古川に12年前の事故のことを話す。大石、森、三田村は建物の回廊に飾られた藤沼一成の作品群を観てまわっていた。大石は、「幻影群像」を観ることにこだわる・・・
第9章 現在(1986年9月28日) 午後4時40分、私は、誰が脅迫状である紙切れを誰が書いたのかに思いを巡らす。拾った状況を確認するため、私は島田を部屋に呼んだ。そこで、水車館を建てた中村青司による仕掛けがあって、そこに行方不明となった古川がいるのではという考え持ち出しながら島田から状況を聞き出そうとする。そのあと、塔に向かった私は、小ホールから聞こえる三田村と由里絵の会話を聞く。夕食のあと、島田は森から文江の転落後に築いた絨毯の濡れのことを聞く・・・
第10章 過去(1985年9月28日〜29日) 午後10時前、窓越しに見た文江の顔が忘れられない倉本は、食堂の片づけや厨房での洗い物や水車の機械室の点検などを行っていた。その途中で、薄暗い回廊で絵に手を触れようとしていた古川を見つけ、注意をする。午前1時過ぎ、倉本は自分の部屋の南側の窓から、別館の方角に揺れる光を見た。寝付かれなかった紀一の部屋に由里絵が来た。由里絵は、裏口のドアが開いており、絵が一枚なくなっていると言う。みんなを集めるが、別館二階にいたはずの古川の姿が消えていた・・・
第11章 現在(1986年9月28日) 午後8時、島田は各人から古川の消失事件の詳細を聞いていた。島田は「しっくりこない」という感想を伝える。そして古川が使っていた部屋にからくりがあるのではと考え、その部屋を調べることにするが、そこには何も見つけられなかった。そんな時、停電が起き、私に触れた三田村が何かに気づく。そして私も脅迫状と開いていた書斎のドアからあることに気づく・・・
第12章 過去(1985年9月29日) 午前3時前、紀一は北回廊で正木から、古川が絵を盗んだことを後悔しているはずだと言い、自分に任せてくれと伝える。その時、裏口の前で由里絵の声が響いた。裏口の扉を開いた正木は古川を見つけ雨の中、外に飛び出す。1時間後、部屋で倉本は「ぎぎぎ」という音を聞く。様子を見に部屋を出た倉本は。地下室への階段の降り口に、無くなった絵を見つける。その時、後頭部に激しい痛みを感じ意識を失った。午前5時、私は食堂で縛られた倉本を見つけた。外に飛び出した正木はまだ戻ってきていないという。その時、倉本は、窓から見える煙突から煙が出ていることに気付く・・・
第13章 現在(1986年9月29日) 午前1時前、由里絵の悲鳴が響き私は居間を飛び出した。外の廊下では倉本が叫び声をあげていた。廊下では朋子の死体が、由里絵の部屋には三田村の死体があった。状況を確認した島田には「なにかうまい形」が見えてきたらしい。私の心中は外の嵐よりも激しい私たちの静寂を崩壊させようとしている狂気の嵐を憎んでいた・・・
インターローグ 1985年9月29日、プロローグの出来事を、名前入りで具体的に回想。
第14章 現在(1986年9月29日) 午前2時40分、私は由里絵を寝室に迎え、由里絵の嘘を確認する。そこで、由里絵の思い、脅迫者の理由を知る。その時、書斎から「ぎぎぎ」という音が聞こえ、書斎から島田が現れる。そこで1年前に起きた事件の真相、私の正体、そして「幻影群像」の正体が暴かれる・・・
【感想】
綾辻行人の「館」シリーズ第2弾です。「館」シリーズを読むのはこれで3作目ですが、これもまた感心するくらいによく考えられた構成であり、秀逸な話の持って行き方の作品でした。面白くて一日で一気に読んでしまいました。

「十角館の殺人」は、島の中と外の出来事の並行進行、「時計館の殺人」は、館の本館内と外の出来事の並行進行、というように、並行進行によるトリックの面白さや、やられたという感じの満足感を与えてくれました。

そしてこの「水車館の殺人」は、現在と1年前の同じ日の出来事の並行進行、という構成で、徐々に真実が暴かれていくという同じような面白さを堪能することができます。この3作の主人公・島田潔は、実際に事件が起きている側ではない方にいて、間接的に事件を解決するというという形です。「館」シリーズはその他の作品も同様の工夫がされているのかと思うと楽しみで仕方がありません。

この「水車館の殺人」の主要人物は、藤沼紀一という人物なのですが、読んですぐに引っかかるのは、現在は「私」という表現、過去は「藤沼紀一」という表現になっていて、すぐに、現在と過去の藤沼紀一は別人ではないかという推理が成り立ちます。そして現在と過去の由里絵の紀一に対する感情が違っているのではと思うような設定に、その思いを強くします。現在と過去の藤沼紀一が別人物、過去で由里絵は正木に好意を持っていた、そういうことから、現在の藤沼紀一が正木であるだろうことが推測できてしまい、そうすると行方不明の古川が焼かれたバラバラ死体であることがわかります。この推理が結局真実そのものなのですが、この部分は作者(綾辻行人)のヒントの出しすぎかなという感じがします。

中村青司のからくりは、今回は事件そのものには関係なく、そこは逆に現実的なトリックだったわけで良い面で裏切られた感じで良かったかなと思います。そして来訪者が観てみたいと思っていた藤沼一成の「幻想群像」の絵に、すべての出来事が描かれていたという、ラストを飾る大オチとなっていたのは、驚きとやられたという感じで満足感を高めてくれました。

「館」シリーズは、読み始めは、登場人物が複雑っぽく感じたり、館のレイアウトが複雑だったりして、わかり難さを感じるのですが、すぐに、その世界に入り込んで頭の中に登場人物とレイアウトが形になっていくという、文章や設定のわかりやすさを感じます。なので、あっという間に読み終えてしまう魅力があります。次は第4作目の「迷路館の殺人」を読んでみようと思います。
上記はあくまで私の主観です。あとで自分がその時にどう思ったかを忘れないための記録であり、作品の評価ではありません。
また、ネタバレの記述もありますので、ご注意ください。