2024年11月7日(木)開始 2024年11月9日(土)読了
作品情報
タイトル わたしの美しい庭
著者 凪良ゆう
シリーズ
初刊出版社 ポプラ社
レーベル
初刊発行日 2019年12月2日
書籍情報
出版社 ポプラ社
レーベル ポプラ社文庫 な-16-1
判型/ページ数 文庫判/311ページ
初版発行日 2021年12月5日
版数 第1刷
発行日 2021年12月5日
定価(本体) 740円
購入日
これも長女が買っていた本で借りて読みました。

親子ではないけれどもマンションの一室で一緒に暮らしている翻訳家の国見統理と小学生の百音、その隣の部屋に住むゲイの井上路有、恋人を亡くして20年以上経っても忘れることのできない同じマンションの高田桃子、かつて同じマンションに住んでいた桃子の恋人・坂口創の弟でうつ病を患っている基、それぞれが生きづらさを感じながらもつながりを通して生き方を見つけていくというストーリーです。

章ごとの語り部は下記のようになっています。

わたしの美しい庭T 百音
あの稲妻 桃子
ロンダリング 路有
兄の恋人
わたしの美しい庭U 百音
ぼくの美しい庭 統理

凪良ゆうの作品といえば映画「流浪の月」を観ましたが、世間の目や価値観を考えさせられるもので重く暗いなぁと感じていてちょっと苦手だなという思いがありました。この作品もそうかなと思って読み始めましたが、テーマははやり価値観の違いによる生きづらさをテーマにしているものの、重苦しさや暗さはなくて、それぞれの語り部の生き方に共感しつつ寄り添えるとても心地よい作品でした。「ぼくたちは違うけれど認め合おう」「それでも認められない時は黙って通り過ぎよう」「無駄に殴り合って傷つけあうくらいなら、他人同士でいたほうが平和」など、そうだと共感できます。何が幸せかはひとそれぞれなのだから、人に自分の価値観を押し付けたり批判したりすることはやめようと、そういうメッセージがこの作品でもぶれずに織り込まれています。この5人はそういう考え方をするがゆえに周りや世間の声に悩むのですが、そんなことは自分たちの幸せや価値観で考えればよいという考え方で強く結ばれているのが、とても羨ましく美しい関係に感じます。基の章「兄の恋人」では、真面目で頑張りすぎて心折れた人に対するメッセージも考えさせられるもので、働くことが普通なのか幸せなのか、それも人それぞれであり価値観を押し付けるものではないことをあらためて感じさせてくれます。マンションの屋上には美しい庭とともに統理が宮司を兼ねる「縁切り神社」と言われる神社があります。その神社で余計な価値観と縁を切りながら成長していき、それで得られる自分にとって心地よい場所が”わたしの美しい庭"なのかなと思いました。

映画では、「流浪の月」のテーマは理解できるし共感できるものの、暗すぎて切なすぎて、その作者の作品は苦手かもという意識がありましたが、この作品を読んで、凪良ゆうの作品を他にも読んでみたくなりました。たぶん、自分の考え方や生き方を後押ししてくれるのではないかという期待が持てる気がします。
上記はあくまで私の主観です。あとで自分がその時にどう思ったかを忘れないための記録であり、作品の評価ではありません。
また、ネタバレの記述もありますので、ご注意ください。