2026年6月8日(月)開始 2026年6月21日(日)読了 (8日 8時間53分)
作品情報
タイトル 未来
著者 湊かなえ
シリーズ
初刊出版社 双葉社
レーベル 双葉社
発売日 2018年5月22日
初刊発行日 2018年5月
書籍情報
出版社 双葉社
レーベル 双葉社文庫 み-21-09
判型/ページ数 文庫判/488ページ
発売日 2021年8月5日
初版発行日 2021年8月8日
版数 第11刷
発行日 2026年3月13日
定価(本体) 780円
購入日 2026年5月20日
【あらすじ】
父を亡くしたばかりの十歳の少女・章子のもとに、三十歳の章子が書いたという〈未来からの手紙〉が届く。その手紙に励まされた十歳の章子は〈大人章子〉に向けての返事という形で日々の日記を書き始める。 意地悪なクラスメート、無気力だったママの変化、担任の先生の言葉・・・辛い出来事があっても、〈未来からの手紙〉に記されていた〈あなたの未来は、希望に満ちた、温かいもの〉という言葉を支えに頑張ってきた章子。しかし、中学に入った彼女を待っていたのは、到底この先に幸せがあるとは思えない事態だった。相次ぐ災厄が、章子の心を冒していく。家にも学校にも居場所のない、追い詰められた子どもたちに待つ未来とは!?・・・

詳細は下記の通り。
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序章 光溢れる夢の国に向かう高速バスに乗った、もうすぐ15歳になる佐伯章子とその友人。章子は10歳の時に受け取った30歳の章子からの手紙を持っていた・・・
章子 10歳(小学4年生)から14歳(中学2年生)までの章子が、30歳の章子からの手紙への返事の形で綴った日記。父・良太の死、母・文乃の人形と人間の日々と変化、祖母から聞いた母が父と兄を殺したという過去、章子の5年担任・林優斗の母への歪んだ思いとストーカー行為、学校での実里による陰湿なイジメ、母の恋人・早坂の出現、早坂からのDV、亜里沙との友情の深まり、父が残したフロッピーディスクの内容の衝撃、母に売春を強いている早坂への殺意・・・
エピソードT 章子の親友・亜里沙のエピソード。父親からのDV、父親の仲介による弟・健斗への性的虐待、章子との日々、姉替わりの存在の智恵理との関係、智恵理の義父による性的虐待、智恵理に潜む別人格、智恵理の自宅への放火、健斗の自殺・・・
エピソードU 章子の4年担任・篠宮真唯子のエピソード。母に捨てられ祖母に育てられた幼少期、教師への夢、大学時代の同じアパートに住む原田との恋、祖母の急死、遺産を狙う母の出現、学費のための如何わしいアルバイト、原田との別れ、教え子・実里の母による大学時のアルバイト暴露による退職、気になる教え子・章子の父への接触と受けた頼み事、ドリームランドに就職している原田との再会、章子と亜里沙への未来からの手紙・・・
エピソードV 章子の父・樋口良太のエピソード。幼少期の石ころのような存在、高校でのに森本誠一郎との出会い、妹・真珠に売春をさせる誠一郎、それによって知り合い好意をよせる良太と真珠、誠一郎の父による真珠への性的虐待、真珠を助ける思いの高まり、誠一郎の本心と父への殺意、殺意実行後の自宅放火と真珠の解放の協力依頼、自分が火をつけたと嘘をつく真珠、その5年後良太と真珠の再会と幸せな日々・・・
終章 章子が早坂を殺害したことを知った母は、予定通りドリームランドに行くことを勧める。夢の国・東京ドリームランドとドリームマウンテンに到着した章子と亜里沙。そこで章子は、ドリームランドを訪れるのは今ではない、今は助けを求めることだと亜里沙に提案する。いつか笑顔で夢の国のゲートをくぐることができる、未来のために・・・
【感想】
映画を観て、親による暴力や、母子家庭の経済的問題、児童への性的虐待などの社会問題を、苦しくなるくらいにこれでもかと突き付けられたので、これは原作も読んでおくべきかなと思ったので読んでみました。

映画では、いろんな視点・時代の話が入れかわり立ちかわり出てくるので、ちょっとわかり難いところもありましたが、小説では、章ごとに、章子、亜里沙、篠宮、良太の一貫した視点で書かれているので、映画よりはわかりやすくて理解しやすかったです。ただ、同じ視点の中でも、思い出したりするという設定で、時系列が前後したり行きつ戻りつつしたりしているところもあるので、そういうところはちょっとわかりにくいところもありました。また、4人の視点の話で全体像を組み立てていかないといけないので、時系列を合わせながら読むということには少し気を使いました。

各章では、視点がぶれませんので、4人の性格や向かい合っている問題に対しては、感情も含めてとてもよく理解できました。映画では出てこないエピソード、例えば、小学5年生の時の担任・林優斗と章子や章子の母とのかかわりや、章子の祖母とのかかわりなどが、映画に比べてより問題を複雑化しています。

映画では篠宮真唯子が主役で、小学4年生の時だけでなく、父を殺そうと考えている中学2年生の時にもかかわってきますが、小説では教師を退職して章子と亜里沙に未来からの手紙を送る経緯までです。映画にあった事情聴取的なシーンもなく、原田と理解し合えて未来につながる形で終わっています。すべての人物にかかわる存在ではあるので、映画で主人公とした理由はよくわかりました。

映画で感じた社会問題は、小説ではより強く感じました。章子、亜里沙、健斗、智恵理、良太、真珠・・・それぞれの境遇がとても身近な問題に感じ、自分を振り返ると、この子供たちに近いことを自分もしていたかも知れない、守ってあげなかったかもしれない、同じように心を傷付けていたかもしれない、そんなことを痛烈に感じてしまいました。あまりにも切なくて可哀想な環境に対して、自分の子供も多かれ少なかれそういう境遇だったのだろうと思うと泣けてきてしまいました。特に、子供間のイジメは本当に無くなってほしいと思いました。

映画での感想で、「親による暴力、母子家庭への経済的問題、児童への性的虐待、若い女性への性的誘惑、こんなニュースは日常茶飯事とも言えます。」と書きましたが、湊かなえもあとがきで、「こういうニュースはマスコミが大袈裟に報道しているのではないか、こんな貧困はもっと緩いものではないかと思うかもしれないが、自分の目に映るものだけで社会を判断するのは危険なことです。それは、見ようとしないから見えないだけ。」と書かれています。「貧困、イジメ、家族の問題等社会の中にある大きな壁の向こうにある「未来」を見てみたいと思いませんか」と締められています。

小説では、映画で読み取れなかった「未来」というタイトルの意味が少しわかった気がします。ラストシーンは映画で感じたのと同じく、章子が急に助けを求める考えになったことが少し不自然に感じましたが、あの終わり方が救いなのかもしれないと思えるようにもなりました。
上記はあくまで私の主観です。あとで自分がその時にどう思ったかを忘れないための記録であり、作品の評価ではありません。
また、ネタバレの記述もありますので、ご注意ください。