2026年5月27日(水)開始 2026年6月3日(水)読了 (5日 6時間50分)
作品情報
タイトル 迷路館の殺人
著者 綾辻行人
シリーズ 「館」シリーズ
初刊出版社 講談社
レーベル 講談社ノベルス
発売日 1988年9月1日
初刊発行日 1988年9月
書籍情報
出版社 講談社
レーベル 講談社文庫 あ-52-20
判型/ページ数 文庫判/496ページ
発売日 2009年11月13日(新装改訂版)
初版発行日 1992年9月15日(旧版)
2009年11月13日(新装改訂版)
版数 新装改訂版第62刷
発行日 2026年5月14日
定価(本体) 900円
購入日 2026年5月20日
【あらすじ】
複雑な迷路をその懐に抱く奇妙奇天烈な地下の館「迷路館」。招かれた4人の推理作家たちは莫大な“賞金”をかけて、、この館を舞台にした推理小説の競作を始めるが、それは恐るべき連続殺人劇の開幕でもあった。密室と化した館の中で起こる連続殺人。真犯人は誰か? 随所にちりばめられた伏線。破天荒な逆転につぐ逆転。作中作『迷路館の殺人』が畏怖すべき真相を晒した後、更に綾辻行人が仕掛けた途方もない2つの罠!・・・

詳細は下記の通り。
クリックして詳細を表示(ネタバレ注意!)
プロローグ 1988年9月2日、夏風邪をこじらせて自宅で寝込んでいた島田のもとに一冊の本が届いた。その本のタイトルは「迷路館の殺人」、著者は鹿谷門美。島田はその本を読み始めた・・・
迷路館の殺人 鹿谷門美
プロローグ 1988年正月、大手出版社「奇譚社」編集者の宇多山英幸は、丹後半島の奥にある日本推理小説界の重鎮・宮垣葉太郎の屋敷・迷路館を訪れていた。そこで宇多山は宮垣から誕生日である4月1日にパーティーを開くことを考えていると聞く・・・
第1章 迷路館への招待 1988年4月、宇多山と身重の妻・圭子は車でパーティーに出席するために迷路館に向かっていた。パーティーの出席者は8人。推理作家の須崎昌輔、清村淳一、林宏也、舟丘まどか。評論家の鮫嶋智生、そして宮垣の知り合いの推理小説マニアの男。途中で車の故障で困っていた男を助けると、その男が推理小説マニアの島田潔だった。迷路館に集まった8人に対し、宮垣の秘書・井野は宮垣が自殺したことを告げる・・・
第2章 競作・迷路館の殺人 宮垣の死は事前に宮垣が読んでいた医師・黒江によって確認されていた。宮垣は井野に遺書とカセットテープを託していた。その内容は、「推理作家の4人は、4月5日午後10時までにある条件の探偵小説を書くこと、評論家と編集者と島田の3人は、4月6日正午までにその作品の優劣の判定を下すこと、最も優秀な作品の作者に遺産の相続権を与える」というものだった・・・
第3章 その夜 宮垣の遺書の内容を承諾し、各々は戸惑いながらも部屋で作業に取り掛かる・・・
第4章 第一の作品 翌日、応接間で須崎が死んでいるのをお手伝いの角松フミヱが見つける。その死体は首を切られ、首の先には黒い水牛の頭が置かれていた。迷路館は電話線が切られており、外に出る扉も施錠されており、その鍵を持った井野は行方不明となり、外への連絡は不可能となっていた。そして、宇多山が須崎のワープロに遺された「ミノタウロスの首」という書きかけの作品を見つける。その内容は須崎の殺害状況そのままの内容だった・・・
第5章 首切りの論理 島田は事件を調べることを提案し、島田、宇多山、鮫嶋、桂子の4人で、応接間を検証することにした。なぜ首を切る必要があったのかという疑問が湧き上がり、それに対し島田から「血痕を隠すのは血だまりの中」という考え方が示される。しかし、7人にはその痕跡が無かった。そのため行方不明の井野が犯人という考え方に傾いていく・・・
第6章 第二の作品 夜中に目を覚ました宇多山は、コンテストの続行を止めるべきだと考え、そのイニシアティヴを握っている清村と話をしようと清村の部屋に向かった。部屋には誰もいなくて、ワープロには「闇の中の毒牙」という書きかけの作品が残されていた。それを読んだ宇多山は作品で示唆されていた部屋で清村の毒殺死体を見つける。そこには舟丘まどかのメモが残されていた・・・・・・
第7章 第三の作品 駆け付けた島田と宇多山は、一緒に行動するために、一番近くの林の部屋を訪れた。そこには、林の死体があった。ワープロのディスプレイには、「硝子張りの伝言」という書きかけの作品と、wwhという文字が残されていた。その時、舟丘の持っていた置換撃退用のポケットブザーの音が聞こえてきた・・・
第8章 第四の作品 舟丘の部屋は鍵がかかっていた。ドアを壊して部屋の中に入った二人は、倒れた舟丘を見つける。舟丘のワープロにはまだ作品はなく、日記が綴られていた。一度目を覚ました舟丘は恐怖の顔で何かを差し示したようにして息を引き取った。時刻は夜明けを迎えつつあった・・・
第9章 ディスカッション 大広間に集まった残された4人は事件について復習しそれぞれの解釈、推察を語り合う。その中で林の残したwwhの意味にたどり着く・・・
第10章 開かれた扉 午前7時半、舟丘の部屋で検証を行い、wwhから隠された扉を見つける。そこには犯人が落としたとみられるフロッピーディスクがあった。そこには「畸形の翼」という書きかけの作品が記録されていた。そこで書きかけの小説と実際の事件の順序が逆だったことに気づく・・・
第11章 アリアドネの糸玉 隠された扉は、各部屋に通じているらしいことがわかり、鍵がかかって入ることができなかった宮垣の死体が眠る宮垣の寝室を目指す。しかし、そこには宮垣ではなく井野の死体があった。そこで、宮垣がすべて企んでいたことだということが見えてきた。宮垣の書斎のワープロに残っていたヒントをもとに、地下室に行くと、そこには宮垣の本当の書斎があり、そこのベッドに横たわる宮垣葉太郎の毒殺死体を見つける・・・
エピローグ 地下の宮垣の書斎にあった白い封筒には、宮垣が書いた今回の出来事の告白と遺産相続人についての文書が残されていた・・・
あとがき 鹿谷門美の「迷路館の殺人」のあとがき。「私は実際にあの事件を観てきた人間なのだ」「関係者中の誰が鹿谷門美なのか」
エピローグ 鹿谷門美の「迷路館の殺人」を読み終えた島田は、ある不自然な点に奇妙さを感じた。1988年9月5日、福岡市内のレストランで島田は鹿谷門美と会い、そこで島田は自分の感じた疑問と推察を鹿谷にぶつける・・・
【感想】
綾辻行人の「館」シリーズ第3作目の「迷路館の殺人」です。このシリーズを読むのは、第5作目の「時計館の殺人」と合わせて4作目となります。同じようなシリーズに周期律の「堂」シリーズ(全巻読了)がありますが、「堂」シリーズが主人公が変ったり時系列的にバラバラだったりして、非常に状況が掴みにくいところがありましたが、この「館」シリーズは、一貫して主人公は島田潔であることと、時系列的に書かれているので、非常に入り込みやすいです。

他の作品では、場所差や時間差が読者への惑わしでありトリックの妙でしたが、この作品はそういう要素は無い作品でしたが、その代わりに、別の観点で読者を惑わすしかけが施されていて、とても面白かったです。「迷路館殺人事件」という作品の中で、鹿谷門美が実際の事件をもとに「迷路殺人事件」を書いて、それを島田が読んでいるという設定からして、なぜこんな構成にしているのかというところから興味がわきます。

「館」シリーズを読み込んでいる読者ならば、鹿谷門美の正体がわかっているので、本作品中の池田と鹿谷の関係はピンときますが、そうでなくて本当に最初から読んでいる人は、その点も騙されるところかも知れません。他の登場人物が推理小説関係者なので、鹿谷門美の正体を知らないと鹿谷=宇多山と思い込まされるかもしれません。

そして、こういう構成にしている一番の目的は、実際の「迷路館の殺人」の犯人は、鹿谷執筆の「迷路館の殺人」という推理小説の内容では不十分で、そこをエピローグの池田と鹿谷の会話で明かにするというところです。これはまったく予測外の結末で、清々しいほどのやられた感がありました。真実はそうだったのかと思いながら、もう一度関係する部分を読み直すと、最初に読んだ時にはまったく違和感を感じなかったのに、真実を知って読んでみたらその方がしっくりときます。なぜ気づかなかったのかという悔しさも感じてしまいます。見事な騙し表現と完全な敗北感です。この騙しテクニックは、絶対に映像化では不可能だと思いますが、映像化は無理だろうと思った「十角館の殺人」はちゃんと映像化できていましたので、この「迷路館の殺人」もぜひ映像化を期待したいものです。

この作品も他の「館」シリーズ同様、かなりの長編でしたがどんどん引き込まれていきますのでまったく長く感じませんし、ストーリー上迷子になってしまうようなこともありませんでした。純粋に推理を楽しめる面白い作品でした。ただ、迷路館の部屋の名前がギリシャ神話の登場人物の名前であり、その関係に疎い私は知識があればさらに面白かったかなと思うと、自分の知識の無さがちょっと残念でした。

次は第4作目の「人形館の殺人」を読む予定です。
上記はあくまで私の主観です。あとで自分がその時にどう思ったかを忘れないための記録であり、作品の評価ではありません。
また、ネタバレの記述もありますので、ご注意ください。