2026年5月9日(土)開始 2026年5月26日(火)読了 (5日 5時間26分)
作品情報
タイトル 後悔病棟
著者 垣谷美雨
シリーズ
初刊出版社 小学館
レーベル
発売日 2014年11月11日
初刊発行日
初版時タイトル「if: サヨナラが言えない理由」
書籍情報
出版社 小学館
レーベル 小学館文庫 か-46-1
判型/ページ数 文庫判/392ページ
発売日 2017年4月6日
初版発行日 2017年4月11日
版数 第23刷
発行日 2025年12月21日
定価(本体) 690円
購入日 2026年4月20日
【あらすじ】
33歳の医師・早坂ルミ子は末期のがん患者を診ているが、「患者の気持ちがわからない女医」というレッテルを貼られ、悩んでいる。ある日、ルミ子は病院の中庭で不思議な聴診器を拾う。その聴診器を胸に当てると、患者の心の”後悔”が聞こえてくるのだ。死を目前にした患者達は、さまざまな後悔を抱えていた。「過去に戻って、もう一度、人生をやり直したい」、ルミ子は患者とともに彼らの”もうひとつの人生”を生き直すことになる。

この世の中の誰もが、「長生き」することを前提に生きている。
もしも、この歳で死ぬことを知っていたら…
聴診器の力を借りて、”もうひとつの人生”の扉を開けた患者たちが見たものは――!?

詳細は下記の通り。
クリックして詳細を表示(ネタバレ注意!)
第1章 dream 千木良小都子(33歳)
母は大女優の南條千鳥。母に反対された「芸能界デビュー」の夢を諦めきれない小都子はそんな母を憎んでいた。しかし、芸能界デビューした過去を体験することにより、母が反対した理由を身を持って知る。芸能界で人の目にさらされて苦労してきた母は、小都子にそんな思いをさせたくなくて、平穏に幸せに暮らすことを願っていたのだった・・・
第2章 family 日向慶一(37歳)
IT企業のサラリーマン。仕事仕事で妻の亜津子とは会話という会話はなかった。若くして死ぬならば残業ばかりせずに、もっと家族と過ごせばよかったと後悔している。過去をやり直す慶一は、仕事は時間内に仕上げ、その後は妻と子供のために時間を使った。そこで慶一は、社会に出ず専業主婦を一生懸命してきた亜津子の孤独や弱さに気づき、自分の死後、章子や鼓動も経ちが困らないような段取りを考える・・・
第3章 marriage 雪村千登勢(76歳)
娘・毎子の幸せを奪ったのは私だ。若い頃、結婚に大反対したから46歳になった今も毎子は独り身なのだと悔やんでいる。しかも、その時に結婚を反対した男・洋太郎はチェーン店の社長になっていたから、よけいにその後悔は募る。過去に戻り、毎子と洋太郎の結婚を許すが、洋太郎は成功せず、毎子は不幸になっていくばかりだった。そんな時、偶然隣の病室に、余命1ケ月の洋太郎の母・ノブが入院してきた。ノブの心の中からは、洋太郎の妻・忍への不満と結婚させたことの後悔が宿っていた。ノブはその結婚をやめさせようと過去をやり直す。しかしどちらの母も現状が一番良かったと知るのだが、毎子と洋太郎は・・・
第4章 friend 八重樫光司(45歳)
中3の時の、今の妻・爽子が起こしたあの”事件”。自分が純生に代わって罪をかぶるべきだったと悔やんでいる。先生に気に入られている自分が罪をかぶれば、純生は希望の学校にも行けず、人生に失敗することはなかった。自分が罪をかぶるために過去をやり直すが、軽くすむだろうという考え方は甘く酷い状況に追い込まれる。そんな時に爽子は純生が好きだったという話を聞き、爽子に不信感を抱いていく。そんな過去に呆然となる八重樫のもとに、治験の話が飛び込む。治験で回復に向かう八重樫のもとに、純生が現れ純生と爽子は何もなかったことや爽子の真実、八重樫に恨みは持っていないこと等を聞く。爽子と親の本性を知った八重樫は・・・
エピローグ 早坂立衛(61歳)
同僚の岩清水の余命2ヶ月の担当患者はルミ子と母を捨てた父親だった。話もしたくないルミ子は石清水の勧めで父と向かい合う。そこで父とんpわだかまりは氷解していく。それによって少し素直になったルミ子は岩清水のドライブの誘いを受け、ルミ子には不要となりつつある不思議な聴診器は後輩の黒田摩周湖に託すのだった・・・
【感想】
長女と書店巡りをした時に、「これ面白そうじゃない?」と示されたのが、「後悔病棟」「希望病棟」「懲役病棟」「絶縁病棟」というシリーズ。著者が垣谷美雨なので、面白いことは間違いは無さそうだと思って、まずは「後悔病棟」を買ってきて読んでみました。

患者の心の中を見るのは医師で、その方法は病院の中庭で拾った不思議な聴診器。患者の胸にその聴診器を当てると患者の後悔を聞くことができて、その世界の中にある扉の先に行くと過去をやり直す体験ができるという4つの話で構成されています。4人の末期患者はそれぞれの後悔をなくすために過去をやり直しますが、それによって知らなかった事実を知ったり、別の道の結末を知ったりして、後悔という負の遺産を解消していきます。

4つの話は、私自身の過去についてもいろいろと胸に刺さるところがありました。第1章は、子供の将来に自分がどんな影響を与えてしまったのかという後悔、第2章は、家族との関係に対する反省や後悔、第3章は、反対の立場で第1章と同じく子供の将来に影響を与えてしまったことの後悔、第4章は、友人との関係にかかわる後悔・・・。誰でもそういう後悔は少なからず持っているものだと思います。人生は、あの時にこうしておけばよかったと悔いる場面はいくらでもありますが、この物語を読むと、どんな道を選んでもメリットもデメリットもあるということにあらためて気付きます。ああすれば良かったかもしれないとか、あんなことをされなかったらこんなことにはならなかったとか嘆いて人生を悔いること自体が愚かなことなのかもと思わせてくれます。

私は子供たち対して、その時に厳しいことを言わなければとか、感情的にならなければとか、学校は続けさせていたほうが良かったのではとか、健康な今でも後悔だらけです。これで余命半年とか言われたら、その後悔はより膨れ上がっていくと思います。しかし、その時々の選択や判断があったからこそ、今の幸せがあるのかも思えたりします。今、生きてくれていて、親と仲良く暮らせていてくれるのであれば、すべての選択が間違っていたわけではないのかもと、自分を少し慰めたり希望を盛ったりすることも許されるのかもしれません。要は、過去を引きずって後悔して暮らすよりも、今を肯定するところからスタートして、この先をいかに悔いなく生きていくかということに集中しろということだと思います。

感動で泣いたり、胸を打つような作品ではありませんが、人生における選択とそれによる後悔をどう考えればいいのかという示唆を得られる作品だと感じました。次は「希望病棟」を読みたいと思います。主役は不思議な聴診器を受け継いだ黒田摩周湖なのでしょうか。そして希望病棟という意味は何を示唆してくれるのでしょうか。楽しみにしたいと思います。
上記はあくまで私の主観です。あとで自分がその時にどう思ったかを忘れないための記録であり、作品の評価ではありません。
また、ネタバレの記述もありますので、ご注意ください。