2025年3月5日(水)開始 2025年3月6日(木)読了
作品情報
タイトル 鏡面堂の殺人
〜Theory of Relativity〜
著者 周木律
シリーズ 「堂」シリーズ
初刊出版社 講談社
レーベル 講談社文庫
初刊発行日 2018年12月14日
書籍情報
出版社 講談社
レーベル 講談社文庫 し-111-6
判型/ページ数 文庫判/480ページ
初版発行日 2018年12月14日
版数 第1刷
発行日 2018年12月14日
定価(本体) 860円
購入日 2025年3月5日
昨日の映画の帰りに書店に寄って買ってきました。初版初刷なのに帯無しだったのが残念です。今日、娘の用件で名古屋に行って車で5時間くらい待つ時間があったので、一気に読んでしまいました。

兄を亡くした悲しみにくれる日々を送る宮司百合子に、善知鳥神からある場所に行くことを勧めらる。その場所はX県Y市にある、建築家・沼四郎が初めて手掛けた、楕球型の外部と内部に鏡がはられたドームで覆われた「鏡面堂」と呼ばれる不思議な建物。そこは、すべての館の原点。そこで百合子は善知鳥神から、ある人物の26年前にこの建物で起きた殺人事件に関して書かれた手記を読んで謎を解くように言う。その26年前の事件の内容と真相は?・・・というストーリーです。

今回もまた今までとは異なる形での展開で面白かったです。今起きている事件ではなく、26年前の事件をある人物の手記によって現在の宮司百合子が解明していくという形です。その事件の真相から、数学者・藤衛と沼四郎の過去、そのふたりと善知鳥神、宮司百合子の関係の真実がまた明らかになっていきます。そしてそれが22年前の藤衛が犯した大聖堂での悲惨な事件につながっていきます。その事件が次回作の第7弾であり最終章の「大聖堂の殺人」となります。第1作から見事なつながりの壮大な作品です。

「鏡面堂の殺人」では、今まで数学界の天皇的存在として何度も名前があがっていた藤衛が、初めて実像として登場します。すべてを見通す洞察力と冷静さ、命をなんとも思わない非情さという人物像がよく伝わってくる事件でした。こういう人間だから何人もの邪魔な数学者をゼロ(死)に落とし込むことができるのだと納得してしまいます。逆に、建築学の下に数学や物理学があると言って自分の建築物を誇示していた沼四郎が、実は優しくて弱い人間だったのではないかということも感じさせられます。「堂」シリーズは、主要登場人物が、作品が進むにつれて人物像が変化していくのが、関係の複雑さ、物語の奥行を出していると感じます。

鏡面堂での殺人トリックは細部まで緻密に考えられていて、理屈的にはほころびが無く感心してしまいます。ただ、ボーガンの命中率を考えるとうまくいく確率がやや低いように感じますし、いくら宮司百合子が聡明だとはいえ手記を一度読んで複雑で緻密な真相がすぐにわかるという流れは、私にとってはちょっと引っかかりを感じました。しかしそれが、全体の面白さや興味を低下させるものではありません。

次は、いよいよ最終章の第7弾「大聖堂の殺人」です。今回の主役は宮司百合子で、十和田只人の善悪の変化についてはまだ謎のままです。今までの一連の殺人の背景、宮司百合子、善知鳥神、十和田只人、藤衛、沼四郎の関係と行動の真相がわかります。「大聖堂の殺人」も昨日購入済みですので、引き続き読みたいと思います。
上記はあくまで私の主観です。あとで自分がその時にどう思ったかを忘れないための記録であり、作品の評価ではありません。
また、ネタバレの記述もありますので、ご注意ください。