2025年3月4日(火)開始 2025年3月4日(火)読了
作品情報
タイトル 教会堂の殺人
〜Game Theory〜
著者 周木律
シリーズ 「堂」シリーズ
初刊出版社 講談社
レーベル 講談社ノベルス
初刊発行日 2015年7月
書籍情報
出版社 講談社
レーベル 講談社文庫 し-111-5
判型/ページ数 文庫判/416ページ
初版発行日 2018年9月14日
版数 第2刷
発行日 2018年10月26日
定価(本体) 780円
購入日 2025年2月20日
第4弾「伽藍堂の殺人」と一緒に買ってきてあった第5弾「教会堂の殺人」を5時間集中で一気に読みました。「堂」シリーズは、単発の「堂にからむ殺人トリック&主人公による謎解き」という形ではなく、登場人物の謎の解き明かしという側面が数学問題(リーマン予想)を軸にとてもうまく組み立てられていて、第4弾「伽藍堂の殺人」から俄然面白くなってきました。すっかり「堂」シリーズにはまってしまいました。

「伽藍堂の殺人」で講演に参加していた数学教授・小角田雄一郎と新聞記者・脇宇兵がX県で遺体となって発見された。ふたりはX県の活火山の中腹にある教会堂に行ったという。教会堂は、今までの堂と同じ建築家・沼四郎の設計した建物で、所有者は藤衛だという。不審さを感じて教会堂を調査しに行ったX県警Y警察署の船生警部補と毒島巡査部長も遺体となって発見される。そのことを知った宮司司も教会堂に向かい、それとは別に善知鳥神は「教会堂には真実がある」と話して宮司百合子を教会堂に誘う。なぜか十和田只人が守り人となって人をゼロに吸い込む教会堂、それぞれの運命は・・・というストーリーです。

この作品は今までの作品とは趣の異なるトリック設定であり、善知鳥神、宮司兄妹、十和田只人の22年前の事件の真相に近づくという、とても興味深い内容です。あまりにも面白くて引き込まれて、5時間で一気に読んでしまいました。今回の殺人トリックは、呼び寄せた人をゲームと称して究極の選択を迫り、必ず誰かが死に、その死の順番が永遠に回り続けるという恐ろしいトリックとなっています。今までは建物が回るトリックでしたが、今回は殺人が回るという意味で、沼四郎の建築物として「回る」という共通点となっています。死への究極の選択をするということで、残忍な殺人よりも読んでいて苦しい感じになるものでした。その殺人輪廻により、第2作で登場した船生警部補や、宮司司を慕ってきていた毒島巡査部長という思い入れのある人の絶望の中の相手を思う死の選択ということも衝撃的で、その時の心情を想像して切なさで胸が苦しくなります。そしてラストは、まさかの大切な人の死の事実をつきつけられて、それを嘆き叫ぶ人の声で終わります。ますます、次の展開が気になる終わり方です。また、なぜ百合子は天井のハッチをあけるのを待ったのか、なぜ神は百合子がそうすることをわかっていたのか、神はマジックミラーの向こうに司がいることを知っていたのか等そこが謎として残っています。これが謎でなければ都合良い展開にしかなりません。次作以降にその謎も明かされるのでしょうか。その謎に加えて、「伽藍堂の殺人」から人が変ってしまったような十和田只人、善知鳥神と宮司百合子の新たな絆、そして藤衛のもくろんでいることと22年前の真実、謎は膨れ上がってどういう結末にたどり着くのか、まったく予想できません。作者があとがきで、『この「教会堂の殺人」での展開がはたして良かったのかどうか、僕は今でも少し懐疑的でいる』と書いています。しかし、『この展開があってこそシリーズは全体として成立する』とも言っています。これからこの物語がどう「転回」していくのかとても楽しみです。
上記はあくまで私の主観です。あとで自分がその時にどう思ったかを忘れないための記録であり、作品の評価ではありません。
また、ネタバレの記述もありますので、ご注意ください。