2025年2月6日(木)開始 2025年2月10日(月)読了
作品情報
タイトル 五覚堂の殺人 〜Burning Ship〜
著者 周木律
シリーズ 堂シリーズ
初刊出版社 講談社
レーベル 講談社ノベルス
初刊発行日 2014年2月6日
書籍情報
出版社 講談社
レーベル 講談社文庫 し-111-3
判型/ページ数 文庫判/480ページ
初版発行日 2017年3月15日
版数 第1刷
発行日 2017年3月15日
定価(本体) 880円
購入日 2025年1月16日
数学の話が難しいのでもう読むのはいいかなと思いつつ、次のストーリーが気になる周期律のお堂シリーズ、今回は第3弾の「五覚堂の殺人」を読みました。

建物をトリックとする基本は同じですが、話の展開パターンが今回も新しいパターンで、宮司百合子、十和田只人、宮司司の三人の個々の話が並行して進むという形式です。時間軸はややズレてはいますが、混乱することなく読み進めることができます。そしてその三つの話が終盤にひとつに重なるというのは、とてもよく考えられた構成で感心してしまいます。今回も数学的な話が色々でてきますが、今回言いたいのは有限の中の無限フラクタルということだけのようで、それも謎ときには大きくかかわりませんので、難しい話は読み飛ばしても大きな傷害にはなりません。

事件を仕掛けてくるのは善知鳥神、仕掛けられるのは十和田只人と宮司司・百合子の兄妹という展開はこの3作目で確立したように思います。今回は宮司百合子が被害者と神が最初に言ったので、百合子はこの作品で死んでしまうのかとちょっと心配しましたが、それは別の意味でのことだった(つまり加害者ではない)ということで杞憂でした。

今回の事件の背景は、23年前の志田家の残忍な事件であり、なんとなくそこでの被害者の関係者の復讐かなということは推測できました。同じ場所にいるはずの十和田の時間軸と事件が発生しいている宮司百合子の時間軸の謎については、過去の作品から建物のトリックだとなんとなくわかります。密室のトリックは、到底推測できない意外なものでしたが、さすがにテコの原理を使うとはいえ大きな建物を歪ませるというのはちょっと実際はあり得ないかなと思いました。また、読んでいて一番怪しいと感じた志田悟が、「実は・・・なので犯人ではあり得ない」と十和田が言うのですが、それは読者には知らせずに読者を都合よく騙していたのではないかと思いました。しかし、あらためて悟について書かれたところを読み返すと、確かにちょっとおかしく感じた表現がいくつかあったことに気づき、結末を知って読むとそのおかしく感じた表現がああそうかとしっくりくることがわかりました。読者を騙していたわけではなく明示していなかっただけだとわかりますが、かといって最初からそれを読み解いて悟は犯人ではあり得ないと気づくのは困難なので、うまく騙されたと言ってもよいのかもしれません。それが作者の策略であり誤った推理に誘導するといううまさであり面白さなのかもしれません。

ということで、今回のトリックは完全には見破ることはできませんでしたが、やられたという感じの納得感のある結末ではなかったかなという感じでした。このシリーズに慣れてきたのかもしれません。とはいえ、十和田、宮司兄妹、善知鳥のキャラクターには魅力があり、そのキャラクターを楽しむという面ではとても楽しめた作品でした。

周木律の堂シリーズの魅力にはまったようで、堂シリーズの次の作品もたぶん読んでしまうと思います。
上記はあくまで私の主観です。あとで自分がその時にどう思ったかを忘れないための記録であり、作品の評価ではありません。
また、ネタバレの記述もありますので、ご注意ください。