2026年8月17日(月)鑑賞 イオンシネマ岡崎(スクリーン9 H-4/5/6)
2026年8月7日(金)公開 / 上映時間:129分 / 製作:2026年(日本) / 配給:松竹
【監督】 新城毅彦
【キャスト】
 加納百合:福原遥 / 宮原涼:細田佳央太 / 藤谷千代:出口夏希 / 鮎川紗良:豊嶋花 /
 藤谷林吉:井之脇海 / 石丸智志:伊藤健太郎 / 加納幸恵:中嶋朋子 / 佐久間彰:水上恒司 /
 寺岡明人:上川周作 / 加藤正勝:小野塚勇人 / ツル:松坂慶子 /
 藤谷千代:倍賞千恵子
【あらすじ】
空に消えた特攻隊員・彰(水上恒司)との別れから7年。百合(福原遥)は彰の夢でもあった高校教師になり忙しい毎日を過ごしながらも、その心は1945年の百合が咲く丘に取り残されたままだった。そんな彼女の前に、彰の面影を感じさせる青年・涼(細田佳央太)が現れる。彼は臨時適任用教員として、百合のクラスの副担任になるという。自分をまっすぐに想ってくれる涼に揺れ動く百合だったが、彰を裏切るようで新たな恋に踏み出すことができない。葛藤のなかで百合が出会ったのは、ホスピスで穏やかな余生を過ごす年老いた千代(倍賞千恵子)だった。石丸(伊藤健太郎)を失った後、千代(出口夏希)が歩んだもうひとつの愛の形。そして千代が百合に託したのは、出撃直前の彰が遺した、未来の百合へ送る1冊の本だった・・・
【感想】
「あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。」がとても良かったので、この続編「あの星が降る丘で、君とまた出会いたい。」も観てみたいと家族も言っていたので、奥さんと長女と私の三人で観てきました。夏休みということもあり、前作の時のように観客には若い人が多かったです。

前作は終戦間際の昭和20年が舞台、本作は百合がそのタイムスリップの体験をしてから7年後の現代ということで、雰囲気は大きく異なるのですが、脚本が素晴らしく、前作から細かなところまでしっかりと繋がっており、その中で、涼との恋愛関係、彰への思いの区切りの付け方、それを後押しする年老いた千代の存在がとてもうまく描かれていました。前作ではぎこちなかった百合と母親との関係も穏やかになっており、百合という名前の由来を話すというところで存在感もより感じました。高校生の頃の将来に悩む自分の鏡として、小説家を夢に持つ鮎川紗良の存在も秀逸で、ラストシーンでは、家庭を持って子供もいる百合と涼のもとに、作者が紗良である「あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。」の本が届けられているという幸せな結末にもなっています。(紗良が「あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。」を書けるだけの情報をどのようにして得たのかは突っ込みません)

現在の平和な環境を大切にするという「平和教育」的な面も取り入れられていますが、押しつけがましいところや、特別な思想に偏っていることなく、特攻隊員の手紙を生徒に読ませて、特攻隊員の気持ちを推察するというところにとどめています。それがとても心を打つのです。このシーンでは涙が溢れてきました。そのシーンで生徒に言う百合の言葉も、彰から自分に託された本(ニーチェの哲学書)の一節を述べるだけなのですが、その一節が「世界には、きみ以外には誰も歩むことのできない唯一の道がある。その道はどこに行き着くのか、と問うてはならない。ひたすら進め」という内容で、将来や夢に悩む若者に勇気を与えるものでした。手紙の朗読も、ニーチェの言葉も、それをどう受け取ることができるか、それは生徒や映画を観ている側に任されています。しかし、こんな内容でも、今はその手紙の奥深い気持ちを汲み取れずに、戦争を助長すると問題になるかもしれません。悲しく情けないことです。

他にも心に残る言葉がいくつかありました。「恩返しのできない人にどうすれば恩返しができるのか」という百合の問いに、すかさず「恩送りすればいいんじゃないですか」という涼の返しの”恩送り”という考え方。それは、今の平和を築いてくれた人々への恩に対して、誰かにその恩を伝えて送っていけば、それが永遠の恩返しの継続となるということにつながります。そして、千代が石丸からもらった「君に幸あれ」という言葉。相手の幸せを願いながら命を落としたものの重い言葉です。千代が「私はとても幸せだった」と幻影の石丸に話すシーンは、感謝の気持ちと愛情がとてもよく伝わってきました。

百合と老いた千代との時間を超えた関係もとても良かったです。特に、千代が百合が本人であることを確信したうえで、ハイタッチをするシーンは年令を超えた友情を感じて感動もの泣けるシーンでした。また、若い千代の出口夏希と、老いた千代の倍賞千恵子が、違和感がまったくなくて同一人物に見えたのは、倍賞千恵子の作品への理解度の深さと高い演技力によるものだと思いました。

涼役の細田佳央太も良かったです。彰とはまったく性格が異なるようで実は芯の部分はよく似ているところがちゃんと伝わってきました。そして全編を通して素晴らしかったのは、当然百合役の福原遥でした。最初は涼の中に彰を見ていた百合が、最後には涼にしっかりと気持ちを伝えることができ、「涼は涼だよ」と言うところが素敵でした。百合のそこまでに至るまでの、彰に対する思いに悩んだり、千代から石丸と夫との話を聞いたり、母の名づけの由来を聞いたりしながら、揺れ動く心情や成長していく過程も唐突感も無くて自然で、福原遥のその演技力、表現力はさすがでした。

途中からずっと涙が流れてきてハンカチ片手に観ていました。資料館での彰の手紙にもまた泣いてしまいましたし、途中で流れる福山雅治の「想望」も心に響きました。もう一度観たいと思わせてくれる、とても良い映画でした。この映画の伝えたいことがどうか若い人たちにちゃんと伝わりますようにと思います。

最後にちょっと疑問に難じたところを指摘。今回百合の住んでいるところは市電などから明らかに長崎。ということは、あの百合の花の丘は長崎ということになり、特攻隊の出兵地も長崎であり出撃したのは7月だったので、あのあと、原爆が落とされたということになるのかな・・・
上記はあくまで私の主観です。あとで自分がその時にどう思ったかを忘れないための記録であり、作品の評価ではありません。
また、ネタバレの記述もありますので、ご注意ください。