2024年11月25日(月)鑑賞 イオンシネマ岡崎(スクリーン8 H-8)
2024年11月22日(金)公開 / 上映時間:112分 / 製作:2024年(日本) / 配給:ハピネットファントム・スタジオ
【監督】 若松節朗
【キャスト】
 津山竜次:本木雅弘 / 田村安奈:小泉今日子 / 牡丹:清水美砂 / 清家:仲村トオル /
 あざみ:菅野恵 / 田村修三:石坂浩二 / 村岡:萩原聖人 / 半沢院長:村田雄浩 /
 桐谷大臣:佐野史郎 / 田中健 / 三船美佳 / 津嘉山正種 /
 スイケン:中井貴一
【あらすじ】
世界的な有名画家・田村修三(石坂浩二)の展覧会で、展示作品のひとつが贋作だと田村が言い出し、大騒ぎになります。その作品に惚れて購入し保有していた美術館館長・村岡(萩原聖人)は、「私はあの絵に心底惚れ込んでいた。それは贋作であっても変わりません」という遺書を残し自ら命を絶ちます。同じ頃、北海道の小樽で全身に刺青の入った女性の自殺水死体が発見されます。そのふたつの事件には、謎の男スイケン(中井貴一)とかつて天才画家と呼ばれていた津山竜次(本木雅弘)が絡んでいることがわかり、若い頃津山の恋人だった田村の妻・安奈(小泉今日子)は、津山を捜し会いに行く・・・
【感想】
先週は忙しくて映画どころではありませんでしたが、やっと時間に余裕ができましたので、気になっていた映画「海の沈黙」(原作:倉本聰)を観てきました。一緒に行った長女は、この映画には興味が無いようで、同じ時間帯で上映されていた「ソウX」を観にいきました。

ちょっと切なくて、「美」の定義とか、過去の記憶とか、そういうことに縛られた人間の悲しさみたいなものを感じる渋い映画でした。若い頃、自分の画家としての道を田村らに閉ざされ恋人も奪われた津山ですが、そのことの恨みで生きてきたのではなく、「美」を追い続けて狂気的に絵を描き続けていることや、時折見せる女性への優しさによって、心は荒んでおらずまっすぐに「美」を追求してきた津山の芸術に対峙する強さを感じます。田村への感情的な恨みつらみは、スイケンが田村に、津山の生き方と画家としては田村よりも津山のほうが上だということを伝えるシーンのみで、そこはスイケンの津山に対する尊敬や敬愛を感じます。

静かで優しさを醸し出しながらも、内面に美を求める狂気を持つ津山を本木雅弘はとても素敵に演じていました。美術品の「美」は人の評価で感じるものではなく、自分が美しいと感じるかどうかだというメッセージも良かったです。それは美術品に対してだけではなく、何事にも言えることだと思います。自分の感性をしっかりと持つことの美しさ、強さを教えてくれます。人の評価に振り回されずに、自分を信じる生き方で満足して生きていければ、それは素晴らしいことです。なかなか凡人には難しいことだとは思いますけど。

最初から最後まで興味深いストーリーと映像に引き込まれて、とても良いものを観たと感じる映画でした。夜の上映だったとは言え、公開直後なのにたった二人の観客だったのが惜しいなぁと感じる映画でした。
上記はあくまで私の主観です。あとで自分がその時にどう思ったかを忘れないための記録であり、作品の評価ではありません。
また、ネタバレの記述もありますので、ご注意ください。