2024年11月4日(月)鑑賞 イオンシネマ名古屋茶屋(スクリーン2 J-6)
2024年10月11日(金)公開 / 上映時間:55分 / 製作:2023年(日本) / 配給:ギャガ
【監督】 堀江貴
【キャスト】
 遠藤みずき:岩田華怜 / 遠藤:冨家ノリマサ / こころの母・浩子:長尾純子 /
 たけちゃん:谷田真吾 / こころ:畠山心 / じいじ:大日琳太郎 / ラジオDJ:徳家羊子
【あらすじ】
東日本大震災の10年後、タクシードライバーの遠藤は、突然車内に現れた同僚たけちゃんから、歩道に若い女性が立っており、車に乗せて目的地の浜町まで行くといなくなっているという話を聞きます。遠藤は一笑しますが、その夜噂の場所で若い女性を乗せることになります。行先は浜町。走りだすと車の前に母親とちいさな子供が飛び出します。その親子の行先も浜町。若い女性と親子を乗せて走りだそうとしますが、車が故障で動かなくなり、そこで、いろんなことがわかっていく・・・
【感想】
この映画は、堀江監督が3.11の伝承風化防止と復興と次世代への育成に貢献したいという思いでスタートしたプロジェクトです。2020年にクラウドファンディングで資金を調達し、2020年に撮影・公開の予定が新型コロナ禍で延期になり、2021年11月に6日間で撮影されて、2023年3月に仙台から公開されました。そして今年10月から全国公開となりました。7回忌となる震災追悼式で出会った女性から聞いた話がこの映画のテーマとなっています。そんな映画なので、ぜひ観たいと思いました。愛知県での上映館は2館しかなく、35km離れた映画館に行って観てきました。55分という映画としては短い話です。

なんとなく、最後のオチというか真実はいろいろと想像して見えていたつもりでいたのですが、予想を超えた結末でした。それぞれの正体は想像通りではあったのですが、遠藤とみずきのお互いの気持を話すシーンでは、涙が溢れてきました。特に、みずきが「世の中は、震災を風化させないために『震災を忘れない!』というけれど、私はそれが辛かった。私は、あの辛い思いをした日は特別な日にしたくない。震災のことは忘れたい」という言葉とその気迫は、今思い出しても目頭が熱くなってきます。その言葉を父である遠藤は優しく受け止め、みずきの手首の傷を目にして、「もう忘れていいよ。私と一緒に行こう」という言葉にも涙腺崩壊でした。逝ったものと残されたものの切なく悲しい気持がそこにあふれている気がしました。

このままふたりは苦しみや辛さから逃れて一緒に消えるのかなと思ったら、みずきは朝の海岸でひとり目を覚ます。遠藤がたけちゃんに何やら「みずきのことでお願いしたいことがある」と言っていたのは、みずきをこの世に残すことだったのかもしれないと勝手に解釈してしまいました。朝のみずきは、しっかりと前を向いていたように感じました。

この映画のテーマ(当事者としての3.11)がみんな同じかと言うとそうでもないと思うし、どれが正解という話でもないのですが、被災者はこういう悲しい思いを抱いたまま忘れたいのに忘れられずに苦しんでいるという現実をあらためて気づかせてくれたのはとても良かったと思います。55分であっという間かなと思っていましたが、中身は濃くて心に響き考えさせられるいい映画だと私は思いました。
上記はあくまで私の主観です。あとで自分がその時にどう思ったかを忘れないための記録であり、作品の評価ではありません。
また、ネタバレの記述もありますので、ご注意ください。