2024年7月9日(火)鑑賞 イオンシネマ長久手(スクリーン3 L-8)
2024年7月5日(金)公開[R-15] / 上映時間:116分 / 製作:2024年(日本) / 配給:松竹ODS事業室
【監督】 三木康一郎
【キャスト】
 原美鈴:奈緒 / 早藤雅巳:風間俊介 / 新妻祐希:猪狩蒼弥 / 渕野美奈子:三吉彩花 /
 三郷佳奈:田辺桃子 / 和田島直人:井上想良 / 小林涼子 / 森レイ子 / 吉田宗洋 /
 清田恵里:板谷由夏 / 池松和男:ベンガル
主演が奈緒だし話題性(良くない面で)もあった映画なので、ちょっと興味を持って楽しみにして映画館で観てきました。話題性と言うのは、奈緒がインティマシー・コーディネーター(ドラマ「不適切にもほどがある!」でも出てきた)を要望したにもかかわらず、監督がそれを受け入れなかったということで批判を浴びたということや、公式サイトのあらすじの「早藤を忌み嫌いながらも、快楽に溺れ、早藤の呼び出しに応じてしまう美鈴」という文章から、「快楽に溺れ」という表現がアナウンス無しで削除されたとかです。

高校教師である美鈴(奈緒)は、親友の婚約者・早藤(風間俊介)からレイプされたことにより、女性であることの不平等の意識で苦しんでいる。そんな中、生徒であり年上の女性に迫られて女性器が怖いと言う祐希(猪狩蒼弥)に好意をもたれ、美鈴を助けたいという言葉に影響されて強くなって早藤と向かい合う・・・というストーリーです。

女性が無理やりに男性から性的暴力を受けた時に、「それは女である自分の責任」だと思い詰め、その結果として、自分の性に嫌悪感を持ったり無力感を感じたりする女性がいたとしたら(美鈴がそう)、「そうではない、それはやはり男の責任であり女性はそのことをしっかりと主張していいのだ」ということをこの映画は言いたいようです。そのテーマは悪くないし共感もできます。タイトルの「先生の白い嘘」というのは、美鈴がそういう自分を責める感情から、自分が傷つかず生きていくために「女は不平等だ、男が悪い」という嘘で自分を守るということを意味しているのだと思います。

そのテーマは悪くないとは思うのですが、物語としては、登場人物の言動や行動に共感を持てないというところが、私にとっては映画の中に入り込めない致命的なところだったかなと思います。あらすじ表現で「快楽に溺れ」を外したことにより、そうでないならば奈緒が早藤の呼び出しになぜ従うのかの説得性が薄くなった気がしますし、対等にモノが言えるようになったからといって、ひとりでホテルにまた会いに行くというのも危険ですし、早藤のような人間が自殺まで追いつめられたとは思えないし(しかも自殺するのに押し入れの中で首つりとは・・・)、こんなことがあったのに、留置所に面会に行く美奈子(三吉彩花)もよくわからないし、登場人物の行動がまったく理解できません。理解はできませんが、美鈴の異様な雰囲気はよく出ていましたし性描写もかなりきわどいものだったので、奈緒は体当たりでよく頑張っていたと思います。好青年の印象の強い風間俊介もこの映画ではとんでもない最低男をよく表現していました。イメージダウンが気になってしまうほどでした。

現実世界では、美鈴や美奈子の立場で早藤のような行動をされたら、もっと早い段階で男に言いたいことを言い見切りをつけるというケースが多いと思います。だからこそ、この映画には男女とも共感しないのではないかなと思います。公式サイトの表現が変えられたことに関するのか、パンフレットは発売延期となっておりました。こういうトラブルが多くても映画自体に満足感があればいいのですが、結局悪いことだけで話題になるのは奈緒主演の映画としてはとても残念です。
上記はあくまで私の主観です。あとで自分がその時にどう思ったかを忘れないための記録であり、作品の評価ではありません。
また、ネタバレの記述もありますので、ご注意ください。