2024年4月8日(月)鑑賞 U-NEXT |
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2010年9月11日(土)公開[PG-12] / 上映時間:139分 / 製作:2010年(日本)
/ 配給:東宝
【監督】 李相日
【キャスト】
清水祐一:妻夫木聡 / 馬込光代:深津絵里 / 増尾圭吾:岡田将生 / 石橋佳乃:満島ひかり
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石橋佳男:柄本明 / 清水房江:樹木希林 / 石橋里子:宮崎美子 / 矢島憲夫:光石研
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清水依子:余貴美子 / 清水勝治:井川比佐志 / 佐野刑事:塩見三省 / 堤下:松尾スズキ |
この小説は2007年に読みました。詳細はもう忘れてしまいましたがとても面白かった記憶があります。今回あらためて映画を観て小説をパラパラと読み返してみて、もう一度この「悪人」という作品に触れてみました。
あらすじは、出会い系で男と会っていた佳乃が山中で殺されて、その犯人として祐一が追われることになり、祐一と出会い系で出会って心を寄せ合う光代が一緒に逃げることを提案してひとときの一緒の時間を過ごすという内容です。
タイトルが「悪人」だから、この物語でその言葉が何を示すのかは最後になるまでわかりません。この物語には、出会い系で相手を物色したり、大学生で人を見下して遊び惚けていたり、子供を捨てたり、悪徳商法で老婆を騙したり、悪い人はたくさん出てきます。その中でも一番悪いのは人を殺した祐一なのですが、最終的には祐一が一番優しくて思いやりのある人間だとわかります。
映画では、祐一が最後に警察に捕まる時に光代の首を絞める行為しか表現されていませんが、小説ではいろんなことが書かれています。小説では、祐一は取り調べで、「自分は女性を追い詰めて苦しむところを見たかった」とか「無理やりに脅して光代を連れまわした」とか証言しています。祐一が自分を捨てた母親にお金をせびっていた話も、祐一が通っていて風俗で心を許した美保に「おふくろに会う時は金をせびる。欲しくもない金をせびるのはつらい。どっちも被害者にはなれない」と語っていたことが美保から語られます。このあたりもできれば映画でも触れてほしかったかなと思いました。
「どちらも被害者になれない」、そういう思いが最後に祐一が光代の首をしめたことにつながります。つまり祐一は自分自身をとんでもない"悪人"であることを徹底することによって、大切な人である光代の平常の生活を取り戻そうとしたのです。自分をひどい"悪人”にして、大切な人を完全な被害者にする、それが大切な人を守ることだと思っていたのでしょう。そこがこの物語のタイトルが「悪人」である所以かなと思います。
本当の悪人とは、優しさや思いやりのない人間であり、法を犯した人間はそれだけで悪人というわけではないし、法を犯していないから悪人ではないということもない。世の中の犯罪の報道においても、そういう視点も忘れないようにしないといけないのかなと思います。佳乃の父である佳男が「今の世の中、大切な人もいない人間が多すぎる。大切な人がいない人間は、何でもできると思い込む。自分には失うものがないから、それで強くなった気になる。」と増尾の友人に言うシーンがあります。身に染みる言葉だと思いました。
特に泣けたり感動したりということはありませんが、原作に忠実に作られておりいろいろ考えさせてくれる良い映画だと思いました。(ちなみに、脚本は原作者・吉田修一と監督・李相日) |
上記はあくまで私の主観です。あとで自分がその時にどう思ったかを忘れないための記録であり、作品の評価ではありません。
また、ネタバレの記述もありますので、ご注意ください。 |
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