2023年8月23日(水)鑑賞 DVD
2020年11月13日(金)公開[PG-12] / 上映時間:104分 / 製作:2020年(日本) / 配給:ファントム・フィルム
【監督】 武正晴
【キャスト】
 田中雅代:波瑠 / 宮川聡史(えっち屋):松山ケンイチ / 能代ミコ:余貴美子 /
 太田和歌子:原扶貴子 / 佐倉まりあ:伊藤沙莉 / 野島亮介:岡山天音 / 本間真一:正名僕蔵 /
 本間恵:内田慈 / 美幸:冨手麻妙 / 貴史:丞威 / 坂上朝人:稲葉友 / 能代正太郎:斎藤歩 /
 能代ミコの母:友近 / 田中るり子:夏川結衣 / 田中大吉:安田顕 / 若き日の大吉:和知龍範 /
 若き日のるり子:玉田志織 / 長谷川葉生
今日は「ホテルローヤル」を観ました。小説「ホテルローヤル」はちょうど10年前に直木賞を受賞した作品で、書籍が出た時にすぐに買って読みました。そういう思い入れのある作品だったのと、主演が大好きで魅力的な波留だったということで、ずっと観たいと思っていた映画でした。原作は、7つの物語が時間軸を過去に遡っていくという構成で、読み進める中でよくわからないことも出てくるのですが、読み終わるとすべてがつながって「ホテルローヤル」を舞台にした人間模様の物語となっています。また、全体を通しての主人公も不在です。映画は、"歓楽寺の住職の妻と檀家とのしきたり”の出来事を除き、6つの出来事を最初と最後の出来事以外は、雅代を中心にわかりやすく描かれていました。特に、"家では肌を合わせる時間がない夫婦"と"親が家出した女子高生と妻の浮気に悩む高校教師"の物語が丁寧に描かれていました。また、ホテルローヤル最終日の雅代とえっち屋の出来事も魅力的でした。ただ、映画としては、盛り上がりや感情移入の部分は少なく、ラストも雅代が反感を持っていたと思われる両親の住んでいた地をめぐるといった背景も感情的にわかりにくかったですし、何をこの映画で表現したかったのかというのはちょっと不透明でわかりにくかったです。

【2013年10月1日のブログでの読書レビュー】
「ホテルローヤル」は今年の直木賞受賞作で、北海道の湿原の見える高台にあるラブホテル「ホテルローヤル」を中心に繰り広げられる短編7編で構成される作品です。
最初の短編が、「シャッターチャンス」。これは、廃墟となった「ホテルローヤル」に入り込み、男女が写真撮影するという話なのですが、正直、この短編だけでは、文章も理解しにくく、ふたりの行動も全然ピンときませんでした。しかし、短編を読み続けると、時間軸が前に前にさかのぼっていくのと、それぞれの短編がきちんとどこかでリンクされていることがわかってきて、全体がホテルローヤルの栄枯盛衰の物語であることが明確にわかってきます。そうすると、実に面白い構成と内容のひとつの作品に思えてきます。ホテルローヤルがまったく出てこない短編「せんせぇ」も、実はホテルローヤル終焉の重要な出来事の布石の物語となっています。読み終わったあとにもう一度すべての物語をそのリンクを確認しながら(ひょっとして気づいていないリンクもあるかも)読み返したくなります。軽く楽しめる面白い作品でした。
ちなみに、作者桜木紫乃の実家がタイトルと同じ名前のラブホテルを経営していて、この作品を書くことで実家がラブホテルだったというわだかまりに向き合えたというようなことを直木賞受賞インタビューで聞いた記憶があります。
上記はあくまで私の主観です。あとで自分がその時にどう思ったかを忘れないための記録であり、作品の評価ではありません。
また、ネタバレの記述もありますので、ご注意ください。